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DSCHさんのコメント: 投票数順

★5ファーゴ(1996/米)例えば、本来ならタトゥーロを配する場所にストーメアを置くこと。そして、究極的な悲哀の固まり=メイシーを軸に据えて笑いを拒むドン引き感。ブシェミを巡る描写も針が振り切れている。雪の白に血の赤がにじみ、暴力と非日常の世界への侵食を示唆する。「滑稽さ」も凍り付く寒さに、マクドーマンドは頑なに「日常的」であることによって対峙する。『ノーカントリー』の時代にもう一度思い出すべき作品。 [review][投票(4)]
★3わらの犬(1971/米)主人公が理性を失う過程を描いている、という評が多いようだが、私には暴力を振るうことが理にかなう状態まで追い込まれることを待っているように見える。暴力は狂気や野蛮のみによって行われるものではない。理性的だからこそ振るう暴力がある。「僕の家」の秩序=理はそうやって守られる。暴力は平等というアイロニー。爆音のステレオによる禍々しい祝祭感の凄まじさ。 [review][投票(4)]
★4ゴーストライター(2011/仏=独=英)ユアンの人選について「英国内の“異邦人”(スコティッシュ)」というルーツに何かしらの意図を符号させようとしたのかどうかはよく知らない。それはともかく、底抜け無邪気な好奇心が人の皮を被って歩いているような、もっと言えば「爽やかな変態臭」をまとった稀有な風貌を正しく使い得た(実は)珍しい映画だと思う。多分『ビッグフィッシュ』以来。監督の職人芸は勿論だが、マクレガーでなければまずこの味は出ない。 [review][投票(4)]
★5博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964/英)性的欲求不満と疑心に端を発する錯誤の連鎖に収拾がつかなくなる様が最高。キーはコミュニケーション不全。双方向会話は完膚無きまでに機能不全(「暗号」というモチーフが完璧)。調停者たらんとする禿頭米大統領の猫なで声の無力感と可笑しさ。不能コミュを尻目に、爆撃機の「交尾」や「発射」、「体液」などの性的一方通行的モチーフばかりが雄弁に成立(屹立!)し、諧謔王キューブリックの絶技と冷笑が炸裂する。先生ありがとう。 [review][投票(4)]
★4海炭市叙景(2010/日)「待つ」ということが、その期待ゆえに強いる激しい痛み。彼らが待つ「何か」とは「幸福などといった名で呼ばれるもの」だが、時として、「求める」ことを許されない市井の人びとの多くはその名を忘れてしまうことすらある。痛くても、それが何かすら分からなくなっても、待つしかない。でも、待つことすら許されないとしたら、人は人でいられなくなるのではないか。 [review][投票(4)]
★3ランボー 最後の戦場(2008/米=独)修羅の庭で機関砲を乱射して咆哮するスタローンの表情は泣いているようにしか見えないが、それはあくまで歓喜の涙である。嫌カタルシスという同時代コードを一瞬で消し炭にする超暴力。一種の神殺し。待望の絶対悪掃滅によって不義のベトナムを克服し、神に苛まれることもなく、遂に彼は胸を張って「家に帰る」ことが出来る。たとえ彼を迎える者がいなくても。そして彼は真の怪物となる・・・のか? [review][投票(4)]
★4もののけ姫(1997/日)封じられた「飛翔(上昇)」。世界の業苦と憎悪全てを「タタリ(重み)」として背負う生命達が、ただ生きるため、つまりは「死に喰われない」ため、互いが互いをテロリストとしてしか認識しないリアリズムのアクション。世紀末的呪詛の大放出だが、私は支持する。これに震え上がることで見える意味もある。正直だと思う。いっそ氏にはタタリ神になっていただきたい。 [review][投票(4)]
★5CURE/キュア(1997/日)「あんた、誰・・・?」という問いが、人が人であるための鎧「定義づけ」の装甲を一瞬で蝕み破壊する。暗示は世界に氾濫し、満ちたそれはすでに暗示ではない。自明・当然とされたものに理由や倫理の付け入る隙などあろうはずもなく、空虚な充実を形作る殺人と終末の拡散に響くピアノの旋律が、禍々しくも甘やか。憎悪は、ついに憎悪ですらなくなる。この上なく危険で邪悪な作品。 [review][投票(4)]
★4月に囚われた男(2009/英)システムにとっては重なりあってはならなかった時間と時間が真実を導き出す。ボタンの掛け違いがもたらす破綻のサスペンスが繊細でこなれている。 ネタがバレてからの情感が本番という姿勢も好感度大で、悠久の残忍とヒューマンな落としどころに手塚的快感・・・というか快感以前にじんと来る。いい映画。 [review][投票(4)]
★4ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い(2009/米)「後出しじゃんけん的設定」が可能にする「状況」のつるべ撃ちの面白さ。時系列で翻弄されてもちいとも面白くないはずだ。「呑んじゃった」後だから良い。少なくとも鉄板ネタを一回捻る志の高さが嬉しい。大騒ぎすべき水準ではないし、懐疑的な輩をねじ伏せる腕力はないと思うけど、徹頭徹尾阿呆でありながらギリギリ悪ノリせず(ほぼ)必然の範囲で慎ましいという良心的なスタイルは素直に歓迎したい。 [review][投票(4)]
★5ファンタスティック Mr.FOX(2009/米=英)ファンタスティック・・・!(再見してレビュー改稿) [review][投票(4)]
★2ジャージの二人(2008/日)いわゆる「ユルさ」「逃避」が「生きにくさ」への果敢な挑戦の迂回的あらわれに変容して見える時、見た目と裏腹に凄絶な「世界」との戦いが現出する・・・風な好意的解釈を何の気なしを装って待っているのが見え見えでそれは別に悪くないのであるが、肝心の空気変換力に力がなくハッタリが放擲されるのみ。の面目躍如たる二面性の危うさと大楠の絶技が空中分解。 [review][投票(4)]
★5トゥモロー・ワールド(2006/米)「神罰」で片付けられないリアリティ。絶望することが得意になった私たちは、この映画に撃たれなければならない。 [review][投票(4)]
★4エクソシスト(1973/米)人間の心に潜む憎悪を媒介にして憑依し、渡り歩くことで永遠の命を得る「悪魔」。根本が実体を持たない象徴悪との精神的戦いであるだけに、次に「悪魔」になるのは「わたし」かもしれない、という他人事でない普遍的寓意を獲得する。「悪魔」自体が怖ろしいのではなく「悪魔」に魅入られる「人間」が怖ろしいのだ。 [review][投票(4)]
★4ブルーベルベット(1986/米)「穴」を伝って光と闇を行ったり来たり。行き来するごとに、日常だと思っていた光が闇に満ちたものに見え、非日常と思っていた闇が妖しい魅力を持って輝き出す。プロットも劇伴も撮影も、この「逆転現象」に傾注した結果、リンチの伝家の宝刀「暗黒の光」と「輝ける闇」が現出する。そして、それは「穴」を経由して旅する者でなければ見えない真の世界。決して「異常」ではない地続きであるという詠嘆と真摯。 [review][投票(4)]
★5気狂いピエロ(1965/仏)最強のアイドル映画。 [review][投票(4)]
★4ターミネーター(1984/米)シュワの大根演技(誉め言葉)が稚拙な「人間ぽさ」を醸す時に、簡単に機械に模倣され還元されてしまう人間存在の危うさを呟いた押井のボサボサ髪が頭をよぎる。しかしそんな思念を容易くぶっ飛ばすビーンのどこまでも人間らしい汗臭さのコントラストが今なお熱い(ビーン万歳)。鋼鉄製のストーカーと漢とイモ姉ちゃんのSF三角関係。発想と単純化と突き詰めの執拗な反復と円環。そして「体液の作家」の真骨頂(か?) [review][投票(4)]
★4ミリオンダラー・ベイビー(2004/米)正しく教わり、正しく教える。正しく教え、正しく教わる。ただそれだけのことになぜこうも心を動かされるのか。今日その理由は明白。しかしその「正しさ」が一瞬揺らぐとき、全ての「正しさ」の意味が失われ、人は選択を迫られる。そして、これまでも「正しかった」のか。その「一瞬」のあまりの重さ。あまりに重くてゲンナリするが、覚悟の上で「真の正しさ」を追求するのが人生だとE親父に諭されたらグウの音も出ない。 [review][投票(4)]
★4ヒーローショー(2010/日)「孤族の国」の物語。肥大化しながら行き場を失った自意識の掃きだめで、一瞬暴発する「俺を見ろ!」という叫びの矛先の狂いが人生を殺す。夢とその残骸が氾濫し、つながりの方法を様々に獲得しながらつながりが崩壊している、これはまことに現代日本的なテーゼである。極めて不愉快だが実にリアル。この無為な暴力連鎖物語は対岸の火事ではない。私たちは覚悟を問われている。 [review][投票(4)]
★4松ヶ根乱射事件(2006/日)雪が融けて土が顔を出すように、平穏という嘘で隠された醜悪は暴かれる。しかしまた雪が大地を覆い隠すように、暴かれかけた醜悪は平穏という嘘と暗黙の了解で再び隠蔽される。しかもそれは「季節」として逃れようのない「サイクル」であることへの絶望。雪(嘘)がとけては積もるというロケーションに寓意を込める的確。 [review][投票(4)]