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[コメント] わらの犬(1971/米)

主人公が理性を失う過程を描いている、という評が多いようだが、私には暴力を振るうことが理にかなう状態まで追い込まれることを待っているように見える。暴力は狂気や野蛮のみによって行われるものではない。理性的だからこそ振るう暴力がある。「僕の家」の秩序=理はそうやって守られる。暴力は平等というアイロニー。爆音のステレオによる禍々しい祝祭感の凄まじさ。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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再三繰り返される「僕の家」という台詞が印象的。そして、「神の名のもとに殺戮が行われることについてはどう考えます?」牧師を揶揄するために放たれたこの台詞。

彼自身の運命を予言していたかのようだ。神などいない。それに近いものがあるとすれば、それは「僕の家の理」すなわち「僕」だ。

それでも、守ったはずの理は妻に否定される。帰り道がわからなくなった、と微笑みながら呟く主人公。どこに「僕の理」が正当化される「僕の家」があるのか。彼は新しい「家」を見つけて、またその理のために暴力を振るうかもしれない。あるいは振るわなくて済むかもしれない。いずれにしても、彼には、つまり人には暴力の問題がつきまとうだろう。激しくも虚しい映画だ。

ペキンパーの演出は良く言えば荒々しい、悪く言えば雑なところが多くて、あまり好きじゃない。凄いカットが突然入るので、もうちょっと練ればいいのに、と思う箇所が多々。別監督かつ後発だが、『ドッグヴィル』の方がテーマが洗練、深化されているようにも思うのでこの点数。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)煽尼采 けにろん[*] 寒山拾得 ぽんしゅう[*]

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