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[コメント] ガメラ2 レギオン襲来(1996/日)

東宝特撮映画によく登場する博士(怪現象を解説してくれる、いわゆる科学の権威)がこの映画には存在しない。にも関わらず、怪獣映画史上もっとも複雑な生態を持つレギオンに説得力を持たせたスタッフに脱帽。
ジョー・チップ

地球の生物のほとんどは炭素系だがレギオンは珪素系生物らしい。レギオンと草体は共生関係にある。草体は地中の岩石を吸収して酸素を大量に放出する。レギオンは草体が作るシリコンを食べて生活する。替わりに動けない草体を守ってやる。成長した草体は酸素を爆発させて胞子を宇宙に飛ばす。レギオンと共に宇宙を旅する胞子、なんと壮大な話だろう(とはいえ似たような植物が星野之宣のマンガ『2001夜物語』にあったような・・・)。しかしレギオンが居付いた惑星はレギオンに食いつくされてしまうだろう。その前に大気中の酸素が急増して、元々いた生物は環境の激変に絶えられない。つまりこれは『もののけ姫』もびっくりの環境を賭けた戦いなのである。                                                               という壮大な話なのにこの映画には政治家や科学者、いわゆるエリートは登場しない。金子怪獣映画は皆そうだが、この映画は特にその傾向が強く、活躍するのは博物館、NTTの職員、自衛隊員も中心は前線の下っ端の隊員である。作戦会議など薬屋さんの2階でやっているのだ。リアルさを考えたら実はこちらの方がありえない事だと思うのだが(笑)、我々観客を怪獣戦に参加してる気分にさせてくれる。特にNTTの帯津が電話一本でガメラのピンチを救うシーン、あれくらいだったら自分にもできるんじゃ…と思ってしまう。地球の危機を救ったのがギラギラなヒーローでなく、控えめなサラリーマンの人たちだったというのが面白い。                                             また、怪獣を見上げるアングルが迫力あるシーンを作っている事言うまでもないが、常に怪獣が誰かの視点で描かれている、というべきかもしれない。その点で名シーンだと思ったのが、飛行場にレギオンが出現するシーンである。飛行場の外、ヘリの中、さらに飛んでるヘリからとレギオンを見る視点が丹念に変わっていく演出が素晴らしい。このシーンのセットは結構しょぼいように見うけられたが、ダイナミックな視線の変化と見てる人間、ヘリとの距離感の把握(レギオンと、その前を飛び立たんとするヘリを同時に画面に収めたシーンが見事)によって、セットのアラなどまったく気にならないのである。                                                                        

(評価:★5)

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