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ぽんしゅうさんのコメント: 更新順

★3苦い銭(2016/仏=香港)労働と対価の多可の話だ。登場する中国の出稼ぎ労働者達には、不満はあっても耐えがたい不安はなさそうに見える。彼らは資本家に“ほどほどの満足”という餌で飼われているのだ。国家は往々にして、この“ほどほど”と“満足”の絶妙なバランスに無関心を決め込む。 [review][投票]
★4脅迫(1966/日)西村の不適、三國の狼狽、室田の蒙昧、春川の困惑、保積の抵抗。そんな“顔”が好い。行動を封じられた室内の閉塞と、屋外の半解放状態の戸惑いが生む緊迫感から現金授受の活劇へ突入する語り口も快調。冒頭の披露宴の逸話がもっと主題にからむのかと思ったが。[投票]
★3ぼくの名前はズッキーニ(2016/スイス=仏)過酷な境遇を背負う子供たちのリアルな現実から目をそらすことなく、といって過剰に悲惨を煽ることも、過度な感傷に陥ることもない。手ざわり感の残る画づらは、節度ある情感を醸し出し安らぎに満たされる。漂う詩情を、希望とみるか願望と取るかが評価の分かれ目。 [review][投票]
★2鉄と鉛 STEEL & LEAD(1997/日)シャープな導入部が劇画のコマ割りみたいで、さすが漫画家きうちかずひろ監督と感心するも、すぐにハードボイルド感は剥げ落ち、バディものとしての感慨や依頼成就や謎解きのスリルも薄味で、ただただ探偵(渡瀬恒彦)さんのドンパチぶりが虚しく銀幕に踊る。[投票]
★4ノスタルジア(1983/伊)地理的なイタリアとロシア=距離。感情的な異国と故国=制度。情緒的な異郷と故郷=思い。この現実の混在に、定点から動けない作者自身が投影された詩人の顛末がどうあろうとも、根底に流れる生命力を感じる。疑似預言者の宗教的な挑発に賭けた覚醒の物語だからだ。 [投票]
★4長江 愛の詩(2016/中国)空間と時間を巻き戻すようにたどる大河の遡上という題材は、それだけでミステリアスで映画的緊張に満ちている。さらにリー・ピンビンが描き出す極上の、人間、モノ(古びた船がこんなに美しいなんて!)、都市や街並、悠久の自然の“美”のなんと魅惑的なこと。 [review][投票(1)]
★4二十四時間の情事(1959/仏)忘れることを悔い、思い出すことで痛む、前にも後ろにも進むことのできなくなった女(エマニュエル・リバ)と男(岡田英次)の逡巡。この明けない一夜の物語は、きっと永遠に続くことだろう。故郷を追われた女と、故郷を汚された男の意識せざる闇依存。[投票(1)]
★4地下室のメロディー(1963/仏=伊)冒頭30分の会話劇の溜めから、犯行手順の説明と同時進行で獲物が明かされぬまま話が転がり始め俄然目が離せなくなり、アラン・ドロンのアクションを経て時間が硬直したような最終盤の緊張へ。この静、動、静の構成を終始冷静なジャン・ギャバンの合理が司る妙。[投票(1)]
★3バルタザール どこへ行く(1964/仏=スウェーデン)子供のロバは子供たちの手で洗礼を受けた。子供が大人に成るということは、自我や社会性を獲得することであり、欲や、エゴや、罪の不自由に心を浸食されるということだ。ロバが成長すると、鎖や、手綱や、蹄鉄の拘束から逃れることができなくなるのと似ている。 [投票]
★3聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017/英=アイルランド)登場する人々の営みは下世話で俗っぽいのに、ひんやりとして温度が感じられない。まるで、こちらの世界との間に透明だが分厚い膜でも存在するように、その奇異な出来事は客観的に淡々と繰り広げられる。現実と非現実の間に宙ぶらりんにされる不思議な薄気味悪さ。[投票(2)]
★3ゆれる人魚(2015/ポーランド)ナイトクラブの絢爛だが薄っぺらい虚飾性と、人魚姉妹の生々しい肢体造形が“見世物小屋”的好奇心をそそり、ミュージカル、ホラー、ファンタジーとして舌足らずなのに最後まで飽きさせない。おおよそ洗練にはほど遠いが、垢抜けない猥雑さに捨てがたい魅力あり。[投票(1)]
★4奇跡の丘(1964/伊)こんなに虚飾を削ぎ落とし武骨に徹した聖書の物語化はなかっただろう。パゾリーニは聖書を純粋な記録物とみなし、物語的に何も盛らない、飾らないことで、キリストをアジテーターに仕立て上げる。用いる手段は抽象的な聖性などではなく血肉のかよう“人の顔”だ。[投票(1)]
★4愛の渇き(1967/日)作為ありありで違和感を扇動するカメラがエキサイティング。何もしてないのに浅丘ルリ子が名演にみえる。前作『愛と死の記録』も斬新だったが、ここに至り何が何でも“違うもの”を目指す40歳、蔵原惟繕渾身の前衛。確信犯的な日活への決別表明の感あり。 [投票(1)]
★3シェイプ・オブ・ウォーター(2017/米)どうもスッキリしない。自分の欠損に気づかない(分からない)から、すべてを受け入れてくれる魚男を優しい(偏見がない)と感じる。これは話のすり替えではないのか。異物はあくまでも異物で、異物を愛さないまでも、受け入れることにみんな四苦八苦しているのだから。 [review][投票(7)]
★2The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ(2017/米)モノにこだわり、人はなおざり。いくら建物やインテリアや衣装に凝ったところで、宗教や戦時下の閉塞、性欲や嫉妬の噴出について、何も仕掛けないのではサスペンスが生れる分けがない。せっかくのN・キッドマン 、K・ダンスト 、 E・ファニングも宝の持ち腐れ。[投票]
★4リバーズ・エッジ(2018/日)4:3の画面のなかに再現される1990年代前半の高校生たちの魂の不全。彼らは自分たちの非力さにも、やがて無防備なまま世紀末の荒れ野に放たれることにも、まだ気づいていない。が、彼らは虚ろな決意を呪文のように繰り返す。私たちは平坦な戦場を生きのびる、と。 [review][投票(4)]
★5ロープ 戦場の生命線(2015/スペイン)まずは、たががロープ一本を求めての右往左往ぶりがすこぶる面白い。そして、国際援助隊の生真面目さと人間臭さが醸す滑稽こそが正に“純粋な善意”の具現なのだ。その裏側に戦争がまき散らした理不尽の種を垣間見て、我々は頬をゆがめつつ乾いた笑を強いられる。 [review][投票(1)]
★3犬猿(2017/日)図式的な兄弟・姉妹のキャラを上手くさばく中盤までは楽しくかつスリリング。本業のコントから江上敬子の芸達者は想像できたが、役柄同様オッパイだけが取り柄だった筧美和子も好演。確信的に“はずした”感の終盤の二転三転があまりにも空疎で台無しに。[投票(1)]
★4野菊の墓(1981/日)清廉なれど、心もとない主演カップルの稚拙さをベテラン役者陣が脇から支え、情緒に流されることなく規律で“緩み”を排除する的確で過不足ない語り口が心地よい。まさに演出力の成果。東映澤井信一郎と大映森田富士郎の職人技と矜持ここにありの佳作。 [review][投票(3)]
★5スリー・ビルボード(2017/米=英)感情的でエキセントリックな怒りに支配されている者こそ、実はどうしようもなく繊細な心情の持ち主だという矛盾。世の中の多くの“こじれ”の根っこは、この人間的な弱さが生む矛盾につながっていくのだ。実に志が高く、かつ正直な憎しみと悲しみについての物語だ。 [review][投票(13)]