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[コメント] 苦い銭(2016/仏=香港)

労働と対価の多可の話だ。登場する中国の出稼ぎ労働者達には、不満はあっても耐えがたい不安はなさそうに見える。彼らは資本家に“ほどほどの満足”という餌で飼われているのだ。国家は往々にして、この“ほどほど”と“満足”の絶妙なバランスに無関心を決め込む。
ぽんしゅう

国家の無関心を良いことに、野放しにされた市場経済が極まったそのとき、“ほどほどの満足”もまたいつのまにか消滅していたことに、労働者(我々)は気づくのだ。

そして、一昨年あの大統領候補に一票を投じた米国のラストベルトの中高年労働者や、低賃金の移民に仕事を奪われ極右化する欧州の若年労働者のように、その行動の極端さや過激さは「ある種の正当性」を獲得してしまう。

中国と日本の経済の伸びしろ考えれば、すぐに気づくはずだ。ここに登場する気のいい中国人労働者たちより、日本人労働者の未来の方がよっぽど暗いのだ。待遇格差と雇止めの不安にさらされている我が国の非正規雇用労働者も、いつか「ある種の正当性」を得た極端で過激な行動に走るときがこないとも限らない。・・・そんなことを考えた。

余談だがこの映画、オフスクリーンから呆れるほど頻繁に車のクラクション音が聞こえてくる。ほとんどの屋外シーンで、ほんの10秒程度の間にも複数の車からと思わるクラクション音が鳴り響く。歩行者や運転者の法令順守に対する意識の低さからだろうか、それとも彼らはせっかちなだけなのだろうか。この“市民の苛立ち”の方にこそ、今の中国事情が反映されていたりて・・・。

(評価:★3)

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