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ぽんしゅうさんのコメント: 更新順

★4ザ・スクエア 思いやりの聖域(2017/スウェーデン=独=仏=デンマーク)堂々と“モノを乞う”者たちを無感情に描き、その“卑屈”を軽蔑しながらも、彼らとの間に引いた線の外側から、手を差し伸べることに誠意を見出す卑屈。「それを言っちゃお終いよ」を承知で、観客を蚊帳の外に放置する確信犯映画。この意地悪さは反則ぎりぎり。 [review][投票(3)]
★4新婚道中記(1937/米)ミスター・スミスと黒猫(一瞬!)の怪演や小ネタも楽しいが、強気のC.グラントに一泡吹かせるアイリーン・ダンの弾けた田舎娘ぶりに爆笑。あと印象的なのは音(隣室の喧嘩、額縁の破壊、カーラジオ、掛け時計etc)や歌(南部訛の俗唄と音楽教室の歌曲の対比)。[投票(1)]
★5めぐりあう時間たち(2002/米)生きる現実とイメージが混濁するキッドマンの虚ろな伏し目。理想の重圧と自我の狭間で苛立つムーアの作り笑い。すれ違いカタチを結ばない幸福に懸命にすがるストリープの献身。女たちの可視化できない想いの齟齬が巧みに編まれた時空、演技、音楽で浮き彫りにされる。[投票(2)]
★4誘う女(1995/米)しばしば、美形と色気は理性を超越し思わぬ暴走を生むが、しょせん影響が及ぶのは二流(地方レストランのドラ息子、ローカル局のお天気ねえさん、落ちこぼれ高校生)どまりという滑稽と哀切。飛翔を夢みた勘違いニワトリの狂騒を戯画的に演じるキッドマンが最高。[投票]
★4心と体と(2017/ハンガリー)夢の共有という突飛な設定が徐々にリアリティを持ちはじめ、ファンタジーというよりサスペンスとして話に引き込まれてしまう。A・ボルベーイという女性のたたずまいが醸す透明な存在感と、生身のと肉感が持つエロティシズムの“虚実のあわい”のたまものだろう。[投票(4)]
★4早春(1970/英=独)15歳の少年にとってこの公衆浴場がすでにDeep End。義務と服従の白衣を脱ぎ捨てて、黄色いコートを颯爽と翻す自由で勝手気ままなお姉さん(J.アッシャー)。童貞少年の白衣の内側は、自分も気づかぬうちに血色に塗り込められる。未熟者の純情を浸食する「赤」色。 [review][投票(2)]
★5三里塚のイカロス(2017/日)悔いてはいないが満足はしていない。結果は出たが終わってはいない。自嘲的であれ論理的であれ男たちの饒舌さに比べ、抵抗農家に嫁ぎ後に夫が運動を離脱した女たちの“顔”は、闘争と家族を担ってしまった過去を懐かしみながらも感情に乏しく、みなどこか虚ろだ。 [review][投票(1)]
★4標的の島 風(かじ)かたか(2017/日)沖縄戦で日本軍は島民を救わなかったと老女が国への不信を露わにする。しかたない。“あの軍”は国民ではなく国体を守るための皇軍だったのだから。自衛隊ならそんことはないと私も信じたい。だが命令一下、そのとき絶対に大丈夫だと、どこの誰が確約できるのだろう。 [review][投票]
★3女は二度決断する(2017/独)世界に蔓延するやっかいな問題に、何ごとか提起しているようで何も語っていない。たとえ対象が家族だろうが、イデオロギーだろうが抱いた思いの「純度」が人の生き方を決定し、ときに対立を生むという矛盾から私たちは逃げられないのに、この女は逃げてしまった。 [review][投票(1)]
★3ラスト・ワルツ(1978/米)数十年ぶりに再見。驚いたのカメラワークの貧弱さ。観ていて楽しくないのです。当時の撮影機材の機動力の限界のせいとも言い切れず、R・ロバートソンのアップ顔ばかりでミュージシャンが楽器を奏でるというアクションへの関心やリスペクトが足りないからだと思う。 [review][投票(3)]
★5ハッピーエンド(2017/仏=独=オーストリア)続発する不祥事の現場の顛末は詳述されず「起きたこと」の“後始末”ばかりが淡々と描かれる。一族間のパッションの衝突は封印され空々しさが蓄積する。これから「起きること」を意志として表明した背中越しの海の青色が、不気味なほど美しいのは、そのせいだ。[投票(1)]
★3クソ野郎と美しき世界(2018/日)いささか、とうの立ったアイドルの新生プロモーションとして既成の枠にはまらない映像作家を起用してオムニバスを作るというのは悪くない企画だし、以前の藤島ジュリーKさんのところでは撮れない映画を期待したのですが、仏は作れても入魂までは難しいですね。 [review][投票]
★4素敵なダイナマイトスキャンダル(2018/日)メガネを曇らせた者たちが象徴的に何人か登場する。みんな感情をむき出しにした人々だ。停滞の70年代から狂騒の80年代、一見、男(柄本佑)が感情を露わにしないのは、混濁した経済と文化のバブルに拝金の腐臭を嗅いだからだろう。健全な精神こそがサブカルを生む。[投票(1)]
★3blank13(2017/日)情に流されず丁寧かつ的確な斎藤工の演出。奇をてらわず控えめな西条みつとし脚本と金子ノブアキの音楽も映画界の新たな希望。安手のお涙ものに陥ることなく、葬儀を義務でこなす息子らの胸中に本人たちも戸惑う“心の隙間”をあぶり出す手腕は見事。 [review][投票(2)]
★3虫女(1972/韓国)生きるために封殺されることを選択する女も、人間性を封印して支配に生きる女も虫女だ。夫の男根の勢いを奪い、三代続いた愛人家系の小娘の野望をがんじがらめに封じ込める猛妻の力の支配に、軍事独裁政権の暗喩を感じる。赤ん坊登場以降の流れがやや停滞する。[投票]
★4祖谷物語 おくのひと(2013/日)たっぷりと時間を使った冒頭のタイトルロールは、観客のリアル時間を徐々に山を流れるゆったりとした仮想時間へと導く。宮崎駿作品のヒロインのような身体能力の高さに裏付けられ、「斜面」を登り、降りる武田梨奈の身のこなしの美しくたくましいこと。 [review][投票(1)]
★4BPM ビート・パー・ミニット(2017/仏)余命宣告を受けたも同然の若者たちの失意の裏返しとしての決起と抵抗の高揚が、沸点へ向かって一本調子で突き進むユーロビートの不穏さとシンクロする。死に急がないために個人が民主的秩序のもとに連帯し、硬直した社会秩序を生き急ぐように激しく攻撃する正当性。 [review][投票(2)]
★4ラッキー(2017/米)頑固でぶっきらぼうだが、礼儀はわきまえている常識人。ヘビースモーカーにして健康体。枯れていながら、意外と女性に人気もある。リクガメのように飄々と、いつもそこに「居る」だけだが、町じゅうの人がその影を優しく見守っている。こんな老人に私もなりたい。 [review][投票(3)]
★4グレイテスト・ショーマン(2017/米)ポジティブな語り口に徹し、常時明るく華やかでスリリングな点。ハッタリではなく進行時間の節約にCGを駆使した点。無自覚さを装いながら権威とタブーを撃ってみせた点。この三点において巧妙かつ真摯なミュージカル映画なのだが、なによりも理屈抜きで面白い。 [review][投票(3)]
★3苦い銭(2016/仏=香港)労働と対価の多可の話だ。登場する中国の出稼ぎ労働者達には、不満はあっても耐えがたい不安はなさそうに見える。彼らは資本家に“ほどほどの満足”という餌で飼われているのだ。国家は往々にして、この“ほどほど”と“満足”の絶妙なバランスに無関心を決め込む。 [review][投票]