★4 | ディープ・ブルー(1999/米) | 冒頭で一応の敬意を表した後、笑いに至る間際の寸止め的な地点まで極まった容赦無さの徹底ぶりで『JAWS』とは違う地平に立ち得ている。ゲスもゴアも臨界線上で高度なパランス感覚を見せ、キャリア停滞の狭間で一瞬ハーリンの達観を感じさせた復活作。 | [投票] |
★4 | ラブゴーゴー(1997/台湾) | 暑苦しい連中のコテコテ話かと思いきや予想を裏切るスマートなポップ。人物が錯綜する多重構造は流行追随かと思わせるが本質は驚くほどに純なのだ。尚かつ全篇寸止め的な刹那感に支配されている。そして、泣き笑いが残す強烈なる余韻。 | [投票] |
★3 | 菊次郎の夏(1999/日) | 極私的であることに異論はないが、普遍のフィルターを濾過しようと皆苦労する。ナマに投げ出された感情を受け入れろと言う姿勢は甘え。しけた風景の中でしけた連中がしけた話を展開するが音楽だけがやたらオーバー。岸本加世子の役作りだけがプロっぽい。 | [投票] |
★4 | ペイバック(1999/米) | 殺したいほど憎くったって最後には神の如き寛容さを見せる伝統ヒーローよ糞喰らえとばかりのギブソンの呵責も容赦もないキャラが一級の出来で、ヘヴィな撮影がハードボイルド世界を全うしている。『ポイント・ブランク』は見てないが、これはこれで傑作。 | [投票] |
★5 | アイス・ストーム(1997/米) | エゴヤン的退いたアプローチが転じて終盤のカサヴェテス的に肉を切る展開に迫るあたりで醍醐味は充足されるが、更にラストで反転されるうっちゃり展開には世界が変じて全てが許容可能となる。前作に続き連チャンされるアン・リーの珠玉のラスト。 | [投票] |
★2 | エヴァの匂い(1962/英=仏) | 魔性の女というにはモローはカルダンの衣装づくしでキザなだけでビルナ・リージの方が余程いいと思えてしまう。役者のカリスマを信頼し過ぎて心理の綾が蔑ろにされている。ロージーお得意の鏡テクも何かの意味を形成するわけでもなく虚ろだ。 | [投票] |
★1 | 英二(1999/日) | TV「とんぼ」には垣間見えた寡黙な男の任侠美学の残照は映画前半ではまだしもあるかに見えた。しかし、終盤には驚天動地の次元に映画は突入する。それにしても凄い…凄すぎる。怒りを通り越し笑うしかないという境地に達せられる思いこみ野郎の大独演会。 | [投票] |
★2 | 共犯者(1999/日) | 題材と竹中主演でどうしたって石井隆映画の文脈延長上で見られる宿命に対して無自覚だと思う。エロティシズムを廃しバイオレンスに新境地を見出そうとしたが垢抜けしないこと甚だしい。唯一キョンキョンが勿体ないくらいの哀感を表出している。 | [投票] |
★3 | 影の軍隊(1969/仏) | 淡々と進む話の流れを断ち切ってでもいいから得意の陶酔型描写を見せて欲しかった。ムーディな叙情描写を旨とする人が見せた転向とも言える叙事的語り口を評価する向きがあったにせよ俺には平板としか感じられなかった。シニョレの圧巻の存在感は見物。 | [投票] |
★4 | SF サムライ・フィクション(1998/日) | 媚びてるようでそういう感じがしないのは気取りの無い真摯な姿勢だと思うし、あざとさ満ち溢れてるようでそうは感じないのは予想外の本物志向の賜物だろう。布袋のロボットめいた無機質感は和製ターミネーターとしてのカリスマティックな域に到達してる。 | [投票] |
★3 | 魅せられて(1996/英=米=仏=伊) | 新人女優の一夏の経験ものという「角川的」典型ジャンル映画に対してのベルトルッチのそれなりに真面目な取り組みは好感を持つが、以上でもそれ以下でもない。硬質なコンジも悪くはないが、このイタリア田園風景はやはりストラーロで見たかった。 | [投票] |
★4 | さすらいの二人(1975/仏=伊=スペイン) | アントニオーニの又かの厭世感は今更とも思うのだが、米欧の主役2人が異郷北アフリカの砂漠に流れ行く様には刹那感も倍加される。そして、予想外に用意された終局驚愕の7分間。このハッタリを好きかどうかが加点の分かれ目。俺は心底打ちのめされた。 | [投票] |
★3 | ドーベルマン(1997/仏) | 過剰でフリークなワイルドバンチ。導入の襲撃シークェンスは空間処理の不均衡も相まって期待も高まる。抗するカリョの狂気も必要充分であった。しかし、そこまで。過剰に突き抜けることもロマンティシズムに反転することもなく予定調和に失速する物語。 | [投票] |
★4 | ロミオ&ジュリエット(1996/米) | ビデオクリップめいた演出は多少鼻につくものの、今更の古典を再映画化するには、枠組みに対してこれ位壊滅的な破壊操作があった方がいい。一方で台詞の温存という自己制約を課したラーマンの矜持。躁状態下の青春劇という本質は正鵠を射ている。 | [投票] |
★4 | マイケル(1996/米) | オールドハリウッドから綿々と連なる過度な刺激には依存しないアメリカ映画の最良の部分。無垢な少年とは正反な胸毛と出っ腹とヤニと油まみれの加齢臭親爺をチャーミング体現したトラヴォルタに祝福あれ。世の審美基準の裏側をいく親爺とはかくも美しい。 | [投票] |
★3 | 蜂の旅人(1986/仏=伊=ギリシャ) | 冒頭の結婚式が深い色調を伴った圧倒的な長回しで結局は篇中最大の見せ場。あとは、もったいぶったアンゲロ調で描かれるものの、本質は『嘆きの天使』か『ロリータ』かといった感じで、なら正直になれよと言いたくなる。流石に舌足らずというしかない。 | [投票] |
★4 | フェノミナン(1996/米) | オールドハリウッド的理想主義と湾岸戦争勝利の反動がもたらした利他主義が同居し宗教臭が横溢してたとしてもケレンは無くストレート。そして、この映画でのトラボルタが醸すオーラは神話の域に到達したかにも思われた。裏目読みはこの際やめて浸りたい。 | [投票] |
★3 | 戦火の勇気(1996/米) | それなりに真摯であるが、どうもメグは「湾岸」より「ベトナム」な感じで違和感を覚える上に、そもそも腰の据わった女兵士の虚無感には遠い。完全なミスキャストなうえ『プラトーン』風『羅生門』テイストな2番煎じ感がシラける。 | [投票] |
★2 | ウェールズの山(1995/英) | 人と人とが信頼し合うのは美しいことだが、そんな当たり前のことを直球で言われても今更どうしようもない。それが失われたものという立脚点に立たねば通用しないのではないか。確信的なら工夫が足りないし素ならお目出度いとしか言えない。自然の景観も普通。 | [投票] |
★1 | ジム・キャリーのエースにおまかせ!(1995/米) | つまらない自己充足ギャグも見せ方次第で輝きを得ることを知ってはいるが、演出にそういう矜持は皆無でただ流されてるだけ。ジム・キャリーを好きでもないが才能はがあるのだろう。しかし、彼を出せば何とかなるみたいな甘えた作りは怠惰でしかない。 | [投票] |