★3 | ウーマン・イン・レッド(1984/米) | 気が弱いのか強引なのかよくわからん主人公も不倫を扱いながらサラリと流すブラックな背徳も題材としては面白いのだがどうにも微温的でパンチが無いのでナンセンスは自走し損ねる。全盛期のメル・ブルックスならと思わせたビリー・ワイルダー的世界。 | [投票] |
★4 | ファースト・マン(2019/米) | 人類初とか米ソ宇宙戦略の駆け引きは置いといてマリックばりに死んだ娘への思いが内省化していく。客体化するロングはシーンで1、2個しかなく只管にアップで突き詰める度胸がいい。彼の沈航する自我を家族の為に引き戻す女房をフォイが静かに好演。 | [投票] |
★2 | オルカ(1977/米) | 『ジョーズ』便乗企画を巨大シャチで勝負するラウレンティスの映画屋魂はありとしても無機的な殺人魚に対して情てんこ盛りの擬人化親子愛ダダ漏れでは古めかしすぎる。北海の景観は情緒を味わうまえに寒々しくて辛気くさくアクションはキレなくショボい。 | [投票] |
★5 | イタリア式離婚狂想曲(1962/伊) | アレン源流的な闊達流麗な語り口。妄想3段重ねギャグはじめ始原的な笑いは古びないし強度は持続する。女に肉慾以外のロマンティシズムを求めてやまない男の哀しい性をジェルミは苦笑いで述懐。入れ子構造な『甘い生活』ネタも映画史の興趣を煽る。
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★4 | 緋牡丹博徒 花札勝負(1969/日) | 良い意味で情を垂れ流すのが仁侠映画の約束事としそれを如何に厳格な様式をもって修飾するかという世界観の中では、これは同じ加藤の『明治侠客伝 三代目襲名』と並び双璧。好き嫌いはともかくこの峻厳さの前には納得し平伏すしかない。シリーズ最高作。 | [投票(1)] |
★3 | 七つの会議(2018/日) | 萬斎と香川の大時代ガチ顔面技対決が対立軸を逸れて雲散する配役ミスはともかく、所詮は本質トップセールスによる社内改革と五十歩百歩なので凡庸な庶民は出る幕ないという話である。隠蔽と主人公の過剰セールスの帰結が全くリンクしてないのも瑕疵。 | [投票] |
★3 | オール・ザット・ジャズ(1979/米) | お手盛りの自画自賛映画だとしても、せめて10年早くフォシー自身の主演で撮って欲しかった。ショービズにどっぷり浸かった男の佇まいがシャイダーではどこか嘘っぽい。ロトゥンノを擁してもフェリーニの夢幻の境地にも到達仕切れなかった。 | [投票] |
★4 | ジュリアン(2017/仏) | 自己愛塗れが帰着するDVのリアリズムと崩壊した家族のそれでも真摯に希求する平穏が容易には得られない現実を冷徹だが思いやりをこめて描くダルデンヌ調。それが過剰な展開に舵を切る終盤は思い余った怒りが噴出する作者の良心の叫びと断罪ともとれる。 | [投票] |
★3 | 暗殺の森(1970/伊=仏=独) | トラウマから逃げるためにファシズムに傾倒し命ぜられるままに暗殺に手を染める。そういう主人公の受け身人生が感情を排した観察眼で取り上げられるのだが、一方で耽美的な映像やデカダンな意匠にここぞとばかりに傾注する。表層的で両者は相互に浸食しない。 | [投票(1)] |
★3 | ナポリの饗宴(1954/伊) | 5つの挿話が連関したテーマで貫かれてる訳じゃなく高らかに歌われるカンツォーネは他所事めいて沁みてこない。ただ幕間の譜面売り一家の悲喜こもごもだけは貧乏人の子沢山なイタリアン伝統のお家芸で安心。女房の積もった鬱憤も娘の恋路の前で慈愛に変わる。 | [投票] |
★1 | 三月のライオン(1991/日) | 行き着くところまで行く閉じた世界と言うならそれはそれで結構だが、理想化された奥村公延の爺さんが出てきた瞬間に物語は白日のもとに客体化され一気に醒めた。他者の青い夢想を延々と聞かされるのは苦痛であり、夢想は夢想で内に留めておくべきだろう。 | [投票] |
★4 | サスペリア(2019/伊=米) | 曰くあり気な事変前のモンタージュが細緻を極めて不穏な前兆をいやが上にも煽るし、いざ事が起こってからのサディズムに呵責はない。洗脳を旨とする魔術の本質がナチの悪夢とテロルの不穏で倍加されるのも良だが終盤でロジックが退きカオスに委ねてしまった。 | [投票(1)] |
★3 | 黄色い風土(1961/日) | 「カイザー・ソゼ」真っ青の真犯人にも驚いたし、前半の如何にも清張らしい構成とムードやリアルな60年代の情景は堪能したが、終盤は展開で語るに疲れ大雑把な日活ニューアクション風味になってしまった。そういった詰めの甘さが石井輝男ならでは。 | [投票] |
★4 | 君とひととき(1932/米) | あまりに芸のない単細胞な浮気映画なのに仰天するのだが、そこを補うべくシュヴァリエが1人語りならぬ歌で熱演しくだらなくって苦笑もん。「あんたもそうでしょ」と観客への語りもだが佳境は浮気するかせぬかで悩む階段下でのハムレットだろう。極みだ。 | [投票(1)] |
★4 | ふたつの時、ふたりの時間(2001/台湾=仏) | どん底に落としたヒロインを救済する前作『Hole』との類似性が興を削ぎテーマも一元的で物足りない。仕掛けられた「時間」ギミックは内実を伴わず上滑る。ただ、照明による画面の奥深い色彩設計はゴダールやベルトルッチの最良作をも想起させる。 | [投票] |
★5 | チワワちゃん(2019/日) | 嵐のように過ぎ行くモラトリアム期の無軌道と軋轢と煩悶を描いて平成の終わりに飛び出した松竹NVの感。それは瞬く間に終わる儚い夢であり殺されたチワワちゃんも程なく忘れ去られるだろう。現場の海岸で手向ける花が猶予期間の終焉を表象する切なさが出色。 | [投票(1)] |
★3 | レネゲイズ(1989/米) | 蓼食う虫も好き好きな2人に当て書きされた設定に人種の文化軋轢バディもんというマニュアルライクな筋書きで目新しさ皆無だが、ふてくされることもなく地道にちゃんとしたもんに仕上げようとしている。殊更に何かで目立とうという邪気がないのも功を奏した。 | [投票] |
★5 | ヴェラクルス(1954/米) | 導入と終幕に魅惑的ガンプレーを置いてるが中身の餡子もぎっしりで一瞬の遅滞もない展開。欲得まみれの4つ巴の化かし合いは最終的に義と我の対峙に収斂すると見せかけ結局野郎同志の信義則に終息する男泣きの苦さ。ランカスターの白い歯が網膜に焼付く。 | [投票(3)] |
★3 | コブラ・ヴェルデ(1988/独) | それ程上昇志向があるとも思えぬ書き込みのキャラをキンスキーが髪を振り乱して自己陶酔しつつ自走し演じたとしても勝手にどうぞとしか思えない。狂気を産み出す閉塞的な密林は、ここでは開放的な沿岸王国に取って代わられて拡散と倦怠が横溢している。 | [投票] |
★4 | マスカレード・ホテル(2018/日) | 仕事に対して明確なポリシーを持つ者同士のガチ確執という一線を崩さない作劇は男と女のよろめき展開を許さない。それがまさみの圧倒的な脚線露出を間近にしてさえもってのが映画的レトリック。定番グランドホテル形式の食傷はセット美術の贅が相殺する。 | [投票(2)] |