コメンテータ
ランキング
HELP

ジェリーさんのコメント: 投票数順

★4ヤンヤン 夏の想い出(2000/台湾=日)登場人物の心に去来する繊細な感情をキャメラで誇張せず、背景と人物がユーモラスにその存在を響かせあう運動の一こまとしてすばやく小さく軽く素描する知的洗練。高架線の下でキスを交わす男女の背後で切り替わる信号の色とタイミングで男女の心理を表現するワンカットの魔術。[投票(3)]
★3イースタン・プロミス(2007/英=カナダ=米)ロシアの過酷な冬の中で鍛え上げられた筋金入りの組織悪の凄みが、香水のように男たちの体から立ち昇っている。男達の整髪料臭さ、ナオミ・ワッツの石鹸臭さ。本作品は嗅覚を刺激する。それは一級品の証だ。性器晒しての取っ組み合いは、その重量感において比類ない。[投票(3)]
★2ターミネーター4(2009/米)映画が不断の新陳代謝である事を制作者が想起し続けているかぎり、志だけはその作品を讃えてよいと思うのだが、その新陳代謝を失念した連作は単独作以上に始末に終えない。前作との世界観的スムーズネスだけが見ものとなった作品を、正直かばいようがない。[投票(3)]
★2スラムドッグ$ミリオネア(2008/英)インドという新規開拓の素材が未体験の風合いを醸してくれるのかと思いきや、ストレートすぎる展開に紋切り型が臆面なくつきまとい、予想外の精神的酸欠状態に陥る。クロスカッティングへの全面依存に創作者としての謙虚さも慎重さも感じ取れない。[投票(3)]
★4恋恋風塵(1987/台湾)俳優の周りの空間を取り込む構図感覚に磨きがかかり、浅い被写界深度による画面整理も実に上品。端役にまで演技と思わせない塩加減の演出を施していく作品掌握力がすごい。ここまでいくとうますぎるいやみが出るところ、訥々とした語り口にして抑制を利かしたところに監督の聡明さが伺える。[投票(3)]
★3夏時間の庭(2008/仏)家族といえどもその構成員一人一人が孤立して在ることの不可避性が、後のカットが前のカットを追い出していくような切り詰め気味の編集(動きは見事に繋がっている!)と色彩設計(コバルトの効いた緑色)で卓抜に表現されている。感傷が溢れすぎないのが良い。 [review][投票(3)]
★5河内山宗俊(1936/日)人情紙風船』が雨なら、本作には傑出した雪のシーンがある。幕末の退嬰的な空気が底流に湛えられていても、具現化されたのはアメリカ映画の理念そのもの。どこかバタ臭い。市之丞と宗俊がワイアット・アープとドク・ホリデイのように格好よい名コンビに見える。[投票(3)]
★4ワイルド・アット・ハート(1990/米)映画の辻褄などどのようにもとってつけて見せられるという高らかな宣言。道化的悪役ボビー・ペルーの造形だけで、この映画は後世に残りうる。円環性の強いリンチ作品にあっては本作は開かれた拡散性を感じる。特定の映像へのフェティッシュなこだわりは既に完成の域。[投票(3)]
★4決断の3時10分(1957/米)臆面も無く突如始まるグレン・フォードフェリシア・ファーのキスシーンの生々しい甘美さが、はるか後半の時計にあぶりたてられるようなサスペンスシーンにまでほろ苦い抒情を響き渡らせる。お汁粉に塩とでも言うべき隠し味効果が鮮烈この上ない。[投票(3)]
★3シェルブールの雨傘(1964/仏)彼らは歌によって自らの出征を伝え、伯母の死を伝え、未婚のままの懐妊を伝えていく。登場人物の夢想の部分を主として担ってきた歌の機能の革命的拡張。その結果、そう珍しくもないプロットに満ちた映画が糞リアリズム映画に堕さずに古雅な神話のような光彩を放つ。[投票(3)]
★38人の女たち(2002/仏)冒頭に屋外撮影がワンカットあるだけで、以降は全く室内撮影のみに終始する。けれども多角的な撮影と絢爛な色使い(絨毯やカーテンの基調色の赤が効く)で我が眼はワインに酔ったかのようだ。豪奢な女優が縦横に動いて、喜劇が終結に向けて一気駆けする速度感が素晴らしい。[投票(3)]
★5カポーティ(2006/米=カナダ)ライフワークというものの恐ろしさを過不足なく伝えきった傑作。疎外されている点において主人公と殺人犯は双子に他ならない。ラストの1枚の字幕が恐ろしく効く。切れ味鋭い編集の腕前によって、あえて気持ち引き気味の構図にした抑制の効いた画面が実に映える。[投票(3)]
★5LOVERS(2004/中国=香港)まず、つっとすばやくひと筋、そのあとゆっくりと哀しみの感情を再確認するようなひと筋。チャン・イーモウ美学の精華ともいえる「涙」の文法を金城武チャン・ツィイー の巧緻な彫刻のような顔が完璧に描き出して見せる。 [review][投票(3)]
★4M(1931/独)映画が勧善懲悪劇であることのクリシェから軽々と逸脱している。正義と悪の対立を異常な集団と異常な個人の闘争に変質させた構想力が素晴らしい。ワイマール・ドイツの潜在的脆弱性に対する嗅覚は今なお貴重だ。ヒトラー内閣成立後の制作だったらこの映画は公開されただろうか。[投票(3)]
★5ヨーク軍曹(1941/米)クリント・イーストウッド監督登場以前と以後では映画における知性のあり方が画然と変わってしまったが、それでもプレ・イーストウッド時代の映画的知性の頂点に立つハワード・ホークスの本作を讃える。詐欺的なまでに狡猾な登場人物配置とキャスティングで主役造形の黄金率を彼は作った。 [review][投票(3)]
★3青空娘(1957/日)題材の好き嫌いとは別の話であるが、鈍重なスケール感を極力廃し、場面転換の速さと画面にきらめきを与える風俗描写、若尾文子のスカートを膨らませる風の心地良さを大事にした佳作。ヒットした大衆歌謡曲に通じるような細やかな神経が行き届いている。[投票(3)]
★3モンソーのパン屋の女の子(1962/仏)シニカルな目線がすばらしい。ご都合主義的なストーリーテリングでありながら、作為性は希薄できわめて自然な流れを感じさせる。このスタイルはこの作家一貫して変わらない。20分弱という短編にここまで男のずるさをもりこめる脚本力も立派だ。[投票(3)]
★4フラガール(2006/日)当時の日本映画すら描けなかった昭和40年代の日本の光がある! 私の記憶でも当時の安普請の木造建物の中に窓から差し込む光は本当にこの映画のようにフラットで白々としていた。湯水のように溢れどこにでも差し込むこの光がこの映画の肝。たくましい楽天主義がみなぎっている。[投票(3)]
★2まあだだよ(1993/日)登場人物や舞台設定が作り物であるという公然の秘密を公式に認めたような出来上がり。開き直りがこの映画の背骨だ。見る者はこの映画を前に怒るのか、笑うのか、見ることを放棄するのか。ともかくも、この映画は『七人の侍』という古典の極北から歩きに歩き続けてたどり着いた、一映画人の精神の高貴な迷走の極点である。[投票(3)]
★4妻は告白する(1961/日)宿業とも言うべき執着の相が輝かしいオーラを放つ増村的女性の極致を見ることが出来る。しかし、登場する男にも女にもフォーカスを当てて見ることが可能な、カットされた宝石のような多面性もまたこの映画の魅力だ。 [review][投票(3)]