★5 | 拳銃無宿(1947/米) | 確固としたテーマ性、こうあるべき渋い脇役(父親、母親、保安官、蹄鉄屋)、広大な俯瞰、酒場の大喧嘩、ユーモラスな家畜、落下する馬車。さらに「無宿の荒くれ男が去らない」という西部劇の定跡崩しの革新性とゲイル・ラッセルの魅力に白旗上げる。 | [投票] |
★2 | 博奕打ち(1967/日) | デリケートなところで後味が悪い。登場人物間の付置結構はまとまっているのに、一部登場人物の結末のつけ方に共感を阻むところがある。観客の感情マネジメントの粗っぽさが敗着の原因。それにしてもこの若山富三郎はすごい。 | [投票] |
★4 | 明治侠客伝 三代目襲名(1965/日) | 地面すれすれにキャメラを置き、掘割の縁に佇む鶴田浩二と藤純子。奥まで合ったピントに思わずうなる。灰色と緑の押さえた色調が抒情的だ。奥には舟影も見えるが、これはたぶんミニチュア。ワンシーンであってもここまで凝るのが加藤泰。
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★3 | 拳銃の町(1944/米) | 謎解きが中心で、ハードボイルド映画に登場しそうな人物が登場する異色西部劇。ジョン・ウェインがいつもと違うし(殴り合いはするが誰も撃たない)、じゃじゃ馬を演じるエラ・レインズにはファム・ファタールのテイストがある。 | [投票] |
★1 | 君よ憤怒の河を渉れ(1976/日) | ひどい映画だった。しかし理由をあげつらうより、海外で大ヒットした理由を考察した方がずっと意義深い。それは、1)主役キャラの一貫性と、2)シークエンス変化が大胆であること。この二つか。(劇判音楽のひどさは、この映画の金字塔なので特筆しておく) | [投票] |
★3 | 儀式(1971/日) | 儀式を通じて求心力を更新し続ける共同体のいやらしさが徹底的にあぶりだされる。そのとき大島渚のとった方法は「禁じ手」である。なぜなら登場人物の「過剰な」振る舞いが、儀式の「過剰さ」を告発するからだ。表現倫理を侵犯した大島渚の心の痛みが伝わってくる。 | [投票(1)] |
★4 | 暗殺の森(1970/伊=仏=独) | 画面の隅々に目を凝らすと、俳優の演技が生んだものとは異なる無数の時間が息づいている。目にしたことが現実のできごとのようにざわざわとして一筋縄ではない。教訓話とも思想とも無関係で不定形な世界が表現され、それ故に美しく、それ故にロベルト・ロッセリーニの正嫡なのだ。 | [投票(1)] |
★5 | 日本侠客伝 昇り龍(1970/日) | 任侠映画は、主人公の感情のピークが喧嘩場に設定されることに本質的意義があった。本作は違う。慕いあう男女の別れの場で起こった。ここに、一つの映画ジャンルが決定的変質を遂げたしるしを見る。藤純子の凄艶で透明な美しさが、その変容を誇る勝鬨のようだ。 | [投票] |
★3 | ひばり・チエミの弥次喜多道中(1962/日) | 歌の上手い二大トップスターを擁して、お江戸ものミュージカルに挑戦し成功。沢島忠の放埓自在な創造性がプロットの組み立てにも、カットのつながりにも瑞々しくいきわたる。時代劇ややくざ映画の東映というイメージが崩されて楽しい限りだ。 | [投票] |
★4 | 希望の乙女(1958/日) | 映画を完成度だけで云々するのは意味薄い、と本作は教える。音楽映画として本家ハリウッドに比べれば稚拙ながらも、創作の姿勢と熱量は相当なもの。美空ひばりの圧巻の歌唱を舞台装置、照明、演出構成が美しく彩る。高倉健は固いが清新。 | [投票] |
★3 | 遥かなる山の呼び声(1980/日) | 表したいことは明確だが繊細さを欠く。山田洋次の弱点である。主人公の背景開示が後半に来るので共感の捧げ方に観客は戸惑う。しかし倍賞千恵子が作品の土台を支える。
タイトルは、『シェーン』へのレスペクトか。駘蕩とした雰囲気が似る。 | [投票] |
★4 | 幸福の黄色いハンカチ(1977/日) | ロードムービーながら、「元の場所に戻る」というモチーフが大きく含まれ寅さんにも似る。やってきて殴り込んで去っていく役柄を長くやってきた高倉健が逡巡の演技を見せ、出色の面白さ。内面のためらいをよそに馬鹿旅はのんびり続く。微笑みをもらった。 | [投票(1)] |
★4 | 霧の旗(1965/日) | 新珠三千代や川津祐介の絡む2次的展開の決着を最終盤で振り捨て、倍賞千恵子の捨て身の復讐劇一本に収斂させるドライブ感を堪能。噴火口ではなく海を選んだ主人公が実に周到。夜の静かな住宅街描写が本格ノワール感を醸し、音楽もクール。 | [投票(2)] |
★3 | 日本の夜と霧(1960/日) | 当時、商業映画としてこのテーマは斬新だったろう。上位者の下位者に対する圧力と侮蔑、そこから生まれる集団的ハラスメント、方針の求心性と遠心性、構成員の日和見化と先鋭化・・・様々な組織内心理が精密に刻まれた稀有な作品。制作陣の心熱が伝わり、今なお脈打つ。 | [投票(1)] |
★3 | 内海の輪(1971/日) | 芸のない脚本から、なんとか岩下志麻が面白みを引き出してみせた。その男以外になんの関心も持っていない痴呆的風情に加え、被虐美だけで押し切る力業。男女の愛憎の生々しさと、逆光に映える瀬戸内の水面の透明な美しさがよい対比をなす。 | [投票] |
★3 | 日本侠客伝 花と龍(1969/日) | 原作のある脚本により、自身に役柄を合わせていた高倉健が役に自身を合わせた。シリーズ初期のような若さを感じさせて面白いが、後半晦渋になる。それより健さんの頬を張る星由里子が遥かに鮮烈。藤純子含めマキノの女優達は古風で可愛く新しい。 | [投票] |
★2 | 日本侠客伝 絶縁状(1968/日) | 任侠道神話は、ひと世代ふた世代前の時代設定でかろうじて見世物にできた。そこに現代を持ちこんでしまい高転び。 無残な灼熱の炎天にさらされ干からびた花一輪。骨格が過去作のまま。破天荒な解体と革命的進化が必要だった。 | [投票] |
★4 | ホタル(2001/日) | 故人に向き合い、大切な言い残しを熾火のように守った夫婦の一生。点綴しかできない映画の限界を超えて、我々がどこまで想像力を働かせられるかが試される。韓国の場面、通訳を介在させて、彼我の関係を描写する解像度を一段研ぎあげた。見事な演出。 | [投票] |
★4 | デューン 砂の惑星PART2(2024/米) | 長丁場の中で見せ場を適切に配して求心力を最後まで維持し、ラストの昂揚を作ったマネージ能力はさすが。物静かな文化人類学者のようだった作風が、俗な既存イディオムをも呑み込む骨太の作風に変容した気がする。主人公の成熟に見合うかのようだ。例えば、 [review] | [投票(3)] |
★3 | 旗本退屈男 謎の幽霊船(1956/日) | このシリーズのパターンが定着。喜劇人の付き人、捕物に協力する妹、奇妙な建築物、、そして旅。国家的大陰謀を豪壮な剣技で打ち破る天下御免の旗本の痛快ストーリーはカラーにふさわしい。琉球情緒たっぷりの舞台設定、音楽も満喫できる。 | [投票] |