★4 | 鬼婆(1964/日) | 鬼とは実は人間であるという至極真っ当な暗黒メルヘン。天下が動乱するとき人心もすさぶ。そこに生きる者たちは、自らの欲望に忠実なだけで、己の心がすさんでいるなどとは微塵も思いはしない悲劇。徹底的に無駄を削いだシャープな黒田清己の撮影は必見。 | [投票] |
★4 | 人間(1962/日) | モノクロ画面ならではのコントラストの効いた強烈な日差しの演出が、この低予算密室劇の肝であろう。まさに神がかり的な亀五郎(殿山泰司)の意志の強さにも説得力がある。『死刑台のエレベーター』の二番せんじな音楽はいささか時勢におもねりすぎでは。 | [投票] |
★3 | どぶ(1954/日) | 「どぶ」は始めから汚れきっていたわけではない。かつて澄みきっていたはずの水は、その寛容さゆえに人為によっていつしか腐臭を放ち、人びとはその薄汚れたさまを他人ごとのように傍観し忌み嫌い、そして遠ざけるのだ。「どぶ」を生む張本人が我々である。 [review] | [投票] |
★4 | 新宿乱れ街 いくまで待って(1977/日) | 山口美也子がひたむきというよりは、いかにも70年代を体現した流されるままの自然体で魅力的。荒井晴彦定番の挫折男沢井がはなにつかないのは曾根中生の手腕だろう。たぶん時間的制約で描ききれなかった周囲の若者たちの群像劇要素の欠落が残念だ。 | [投票] |
★4 | 恋人たちの食卓(1994/台湾) | 自らの欲に素直であることが若さの証しだとすれば、養い守るべき対象が出来たとき、若さは封じられ欲は庇護欲にカタチを変える。父の庇護、すなわちその料理を無条件に喜んで受け入れたのは、娘たちではなく小さな少女だった。父の欲が開放されたのもうなづける。 | [投票] |
★4 | ウェディング・バンケット(1993/米=台湾) | 定番の設定を肉づけした、怒涛のお祭りカルチャーギャップ騒ぎの横糸と権威的ブルジョア父母、特に元軍人である父の隠れた心情という縦糸のアヤの妙。父が自らの若き日の入隊理由を息子に語るところが実はきもで、そこにアン・リーの普遍愛礼賛の源泉をみる。 | [投票] |
★2 | ジャスミンの花開く(2004/中国) | 無意味な予定調和の連鎖が、さも意味ありげに連綿と続く。観客をなめたように繰り返される幸福と不幸の反復は、60年の歳月のうわべをなぞっただけで、女たちの年代記には何の深みも感じない。理屈っぽく凝った画が視覚的に華美なぶん、かえって不快な小手先映画。 | [投票] |
★2 | ハチミツとクローバー(2006/日) | 蒼井、伊勢谷、西田の想われ組み対、櫻井、加瀬、関の想い組みという「夢のような」構図ですら気恥ずかしいのに、櫻井のアイドル映画として「絵に描いたような」青春坊やを無理やり上塗りした中途半端さが見ていてつらい。割り切りの悪さは底の浅さに比例する。 [review] | [投票] |
★4 | 悶絶!!どんでん返し(1977/日) | エリート男が女となり、風俗女は男に男を奪われる。スケ番たちはチンピラの金づるに成り下がり、レズ娘は男を女と信じることで女に開眼し、勝気娘はスパルタ男との純情に走る。バカバカしいまでのどんでん返し合戦。でも男と女なんてそんなものかもしれない。
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★3 | 反逆のメロディー(1970/日) | 前世代の高倉健扮する渡世人は義理と人情の狭間でゆれるのだが、原田、地井、藤は経済ヤクザ化する親分衆と蛾次郎率いるギターを囲んで歌に興じる次世代間の価値のギャップに苦悩する。70年という時代を反映した迷走。原田芳雄の乱闘シーンは殺陣のようで美しい。 | [投票] |
★3 | 妻の心(1956/日) | 嫉妬、甘え、しがらみ渦巻くなか妻と嫁の立場を行きつ戻りつ、喫茶店開業を唯一の求道に、ため息混じりの呆れ顔しつつ我が道ゆずらぬ喜代子(高峰秀子)のなんと健気でしぶといこと。ただ一度、彼女が夫を責める以外、誰もみな感情の高まりをあらわにはしない。 [review] | [投票] |
★3 | 夜の流れ(1960/日) | 豪華な出演陣ながら、個々の人物にその美貌以外の魅力を見い出せず、あわただしさだけを感じてしまうのはダブル監督ゆえの弊害だろうか。後半、メリハリなく続く女たちオチの串刺し状態を見ると、むしろ井出俊郎、松山善三のダブル脚本のせいのような気もする。 [review] | [投票] |
★5 | 初春狸御殿(1959/日) | 一見、舞台演出的に見えながら、舞踏、歌謡、衣装、光彩、さらに男女優の美貌までもが、徹底して計算された映画的作りもの感で貫かれ、なんともキュートで非日常的な異空間、すなわちハレの場をみごとに出現させている。キッチュな美術は装置映画としても出色。 [review] | [投票] |
★4 | 泪壷(2007/日) | ひとつ間違えば非現実的でベタな絵空ごとに成りかねないメロドラマを、適度な性的過剰さと青春期の危うい自意識の演出で、現実からほんの少しだけ浮遊させて見せきってしまう瀬々敬久の手腕はなかなかみごと。小島可奈子の不安定感の体現も切なくて好い。 | [投票] |
★4 | 眠狂四郎人肌蜘蛛(1968/日) | 星川清司が渾身の意地悪さで描く王道から忘れ去られた者の狂気を川津祐介と緑魔子が好演。緑の負のパッションVS.狂四郎の無情対決の凄まじいこと。お馴染の次から次ぎへの色仕掛け攻勢も、わかっちゃいるけど楽しい。渡辺文雄もいかにもな適役。 | [投票] |
★4 | 眠狂四郎 悪女狩り(1969/日) | 劇画的コマ割りを彷彿とさせるカット繋が小気味良いリズムを生み、テレビ的とも見えるケレン味が雷蔵のスター性を際だたせる。「動」と「静」、「明」と「暗」の巧みな演出はまさに池広一夫演出の真骨頂。久保菜穂子の美しき悪女ぶりも魅惑的。 | [投票] |
★2 | 学園広場(1963/日) | 植頭実、堺正章、桂小金治、 殿山泰司 、安部徹、由利徹ら脇役陣は、各人の持ち場でしっかりとその存在感を表すのだが、肝心の山内賢、松原千恵子、舟木一夫らにオーラはなくあまりにも淡白。名実ともに日活青春スター映画の終焉の近さを感じさる。 | [投票] |
★2 | 花と果実(1967/日) | 60年代前半ならまだしも後半において、この石坂ワールドの恋愛感や自由感はさすがに古臭くて時代性を失くしていただろう。のぶ子(和泉雅子)のはつらつさはただの世間知らずの耳年増娘、五郎(杉良太郎)の純真さは凡庸な性欲欠落男にみえてしまう。
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★4 | 赤い蕾と白い花(1962/日) | 話の浮つき加減はあの時代の空気だと割り切ってみれば、何のてらいもなく吉永と浜田の溌剌さを、グイグイと突きつける西河克己の手腕が光る。線路脇の浜田と子犬の移動ショットから、吉永一家の朝食シーンまでの軽快な導入部の吸引力は青春娯楽映画の鏡。 [review] | [投票] |
★3 | 百万円と苦虫女(2008/日) | 鈴子が一人になったとき、例えばスーパーの袋をさげてポツリとたたずむとき、海辺で眩しげに彼方を見据えたとき、部屋でごろりと横になったときにみせる蒼井優の肢体のなんと伸びやかなこと。何も悩むことなどない。別に世間と正面から向き合う必要などない。 [review] | [投票] |