★4 | 紅塵(1932/米) | 簡潔で無駄がないがコクと余白もない80分の不倫ヨロメキ劇だが、分を弁え引きのスタンスで諦観するハーローの存在が糊代を広げる。冒頭ゲーブルとの腹の裏を探り合うような駆け引きが洒落ていて絶品。仏領インドシナの最果て感があれば尚良かった。 | [投票] |
★4 | ラブINニューヨーク(1982/米) | ウォール街から死体置場の夜勤という窶れた荒びの日々が夜の女たちの元締へという急落で一気に底打ちし反動へ向かう。遣る瀬無いペーソスと狂的な逸脱がワイルダーの周到なトレースを感じささせる佳作。主演2人のキャラ不足をキートンの目力が追補。 | [投票] |
★3 | オクラホマ巨人(1973/米) | 共闘関係のなかで軟化する男性嫌悪という鉄板ネタをガンガン押す訳でもなく、文字通りのカラ騒ぎに終わる顛末が如何にも半端。それでも味ある役者が演じる中年男女の接近は仄かにはときめく。見所は丘の争奪という高低差の活劇性とパランスの底知れなさ。 | [投票] |
★2 | 嘘八百 京町ロワイヤル(2020/日) | もともとに気の利いた騙し芸があるわけじゃないのに、冴えないテキトー男たちの馴れ合いの狭間から時折垣間見える本物といった味わいさえも喪失してスカスカ。塚地やほうか等前作で本筋に絡む余韻を見せた脇役も顔見せ程度。完全な乗っかり仕事だ。 | [投票] |
★4 | ラストムービー(1971/米) | 入子細工の構造がメタフィジカルな解読を強いるのだが、要は浮気して女にフラれ一攫千金を目論み文無しになった男が、もうわてわやくちゃでんがなという話。ホッパー映画キャリアの残滓が随所で顔を出す。特に『ジャイアンツ』の影を感じさせ泣けるのだ。 | [投票] |
★5 | ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密(2019/米) | 富豪の相続に纏わる西洋版『犬神』は金田一ならぬクレイグのキャラ立ちもイケてグイグイ来るのだが、それでも特筆は不意打ちの如き男の死に様美学。移民や格差という現在形問題を差し込んだ古典仕様。カオスのような諸要素が一点集約されるラストカット。 | [投票] |
★3 | モリツリ 南太平洋爆破作戦(1965/米) | ブランドが職能者として任務を遂行するのだが場当たり的で牽引力が弱い。替りにマーゴリンの切実な思いと覚悟、ブリンナーの高潔と脆さがエモーショナルに一応は活劇性を下支える。終盤も済し崩しとしか言えないが2度の空撮が唐突ながら魅せる。 | [投票] |
★4 | カツベン!(2019/日) | 図らずも長瀬に言わせる弁士無しで映画は既に出来上がってるが周防の本音なら、なんで撮ったのとなるが、嘘がつき通せぬ誠実の顕れとしとこうと思う。消えゆく徒花が繰り広げる廉価な狂躁は未来のない諦念に影さされる。シニカルでらしい映画と思う。 | [投票] |
★3 | 鱒(1982/仏) | 女に翻弄され自壊する親爺の話が本筋のはずだが、ユペール東京不思議紀行が歪にオモロイのでカッセル・モロー夫妻は味噌っかすで気の毒。終焉のあとの2人のリアリストの女に向ける視線のニヒリズムは詠嘆的だが何かが本当に語られたかは疑問だ。 | [投票] |
★3 | 怪盗ルパン(1957/仏) | 正体に感付く乃至は知っている女性たちに対し男たちは鈍感で、さすれば共有する秘事に対するトキメキが発生してもいいのに洒脱に欠けるラムールには荷が重い。後半で城内展開に終始するがエドワーズ的悪乗りもし損ねてキッチュな装置がスベっている。 | [投票] |
★3 | 痴人の愛(1934/米) | 裏切られ許し利用され諦めるを繰り返す流れは、起因するコンプレックスを掘り下げないのでバカの愛にしかならない。足が治って目が覚めた彼の栄華の片隅でボロ屑のように朽ち果てるベティの生き様こそ語られるべき物語。クロムウェル演出も陳腐だ。 | [投票] |
★4 | あなたの名前を呼べたなら(2018/インド=仏) | 階級という障壁を乗り越えるに2人には饒舌や激情を表することは叶わない。中盤のEV内やラストの屋上の長い沈黙に秘められた想いを映画は大事に慈しむ。家を訪れた友人が瞬時に2人の関係を察知するシーンなど鮮やかで山田洋次のメンタリティに近い。 | [投票] |
★4 | 嘆きの天使(1930/独) | 下宿と教室を往還するだけの狭い世界観は扇情世界の端っこに触れただけで瞬時に崩れ去る。それを甚振るかのような嗜虐の積み重ねがコケコッコーで完遂されるのだが悪意の奔流にゲップ出そう。しかし、長い苦しみの果ての眠りを慈しむかのような視線は暖かい。 | [投票] |
★3 | ターミネーター:ニュー・フェイト(2019/米) | 食傷の液体金属と寂寥のリンダ&シュワの老残だが、只管に守り倒すの展開の果てに明らかになる庇護・守護者の未来での縁は機械が守るのそれとは違い心情がこもって打たれる。2つの禁句が反転結実する終盤の佳境は如何にものマニュアル感を抑え込む。 | [投票] |
★3 | スエズ(1938/米) | お仏蘭西に於ける色恋に尺割く位なら、国家間の意思が相克する歴史的プロジェクトの背景をもっと詳しくとも思うのだが詮無い話なんだろう。にしても最大の佳境が降って湧いた竜巻だとあっては何だかなの世界。ただ、それは『ハリケーン』級の見せ場ではある。 | [投票] |
★3 | 最前線(1957/米) | 孤立無援のドン詰まり状況が侘しい低予算と同期して限りなくしんどいのだが、自我を抑えて敗走の指揮を執るロバート・ライアンの滋味が辛うじて映画を牽引する。しかし、得体の知れぬ2人の合流で混沌は弥増す。勇壮のかけらもないアメリカの混迷の端緒。 | [投票] |
★3 | ドッグマン(2018/伊=仏) | 曇天と泥濘の町と小心だが小狡さも持つ非映画的な主人公と環境設定は完璧に近いが、窮鼠猫を咬むの物語に娘思いと犬好き要件が並置されるだけで全く関与しないのでなんじゃいなの単線構造で終わってしまう。も少しでも感情心理の変転に寄り添えばと思うのだ。 | [投票] |
★4 | 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男(2018/韓国) | 敵の懐に入り込むことが信頼や尊厳をも裏切らざるを得ない遣る瀬無さが俄かに浮上し怒涛の顛末を迎える終盤。実は握っていたのポリティカルな虚実も吹き飛ぶ寧辺シークェンスの惨状は北高官の心情を吐露させる。担うイ・ソンミンの仮面の下の痛切な心根。 | [投票] |
★4 | 帰れない二人(2018/中国=仏) | 近代化が進む都市群と逆行するかのように2人の狂熱の時代は過ぎて朽ちていく。その巨視的概観のロマンティシズムは絶品。だが、邂逅の瞬間を描かない矜持は終局の『男たちの挽歌』的顛末と相反する。ラストのアントニオーニな詠嘆が顕す愛の不毛は熾烈。 | [投票] |
★4 | サンセット物語(1966/米) | ゴダールなファーストカットとジョン・ウーなラストシーンを持つ素晴らしく歪なバックステージもので、主人公を翻弄することに呵責無くマリガンのハードボイルド性が滲み出る。カマトトを超越するウッドの受け芝居の泰然が歪みを是正した。 | [投票] |