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けにろんさんのコメント: 更新順

★5ザ・マスター(2012/米)劇的構成の醍醐味があるわけでもないが、映像の醸す豊穣が半端ではない。撮影と美術が渾然となり提示される情報の質量と、その中で揺蕩う演者の含蓄ある居住まい。ゲスでいかがわしい品性を達観の高度から俯瞰する一大エピックロマン。PTA最高到達点。[投票]
★4ジャスティス(1979/米)漫画チック未満の微妙なカリカチュアの按配が良く、ポイントでは結構金もかけ厚味もある。並行する多くのプロット群は有機的錯綜を見せないのだが、それが味でもあり、自殺癖の判事や仕事の矛盾に悩む弁護士等、本筋以外の多彩な人物群像が味わい深く魅せる。[投票]
★3さらば復讐の狼たちよ(2010/中国)コメディベースな緩さは良いとしても、一転非情に舵切る瞬間の振り切れが半端でもっさり感がいや増す。「馬車列車」や「女太鼓」とか珍奇への異様な拘泥は好ましく、殺され方に残虐嗜好が垣間見えることも買うが、如何せんナルシズムと思い入れ過剰で長いわ。[投票(1)]
★4横道世之介(2012/日)世之介のキャラは強固な太陽ではなく周囲の偏向キャラに照射され追憶に光を留める月光として介在するのが良くも悪くも吉田修一的。濃密な80年代の空気と吉高の愛くるしい笑顔で十二分に持っていかれるが、終わってみれば結局釈然としない感が残る。[投票(1)]
★3ホーリー・モーターズ(2012/仏=独)カラックスを愛すべきイジケ野郎だとは思うが、にしても刹那に耽溺し自虐的に過ぎないか?正直ミノーグビノシュに重なり痛々しく照れ隠しのウータンは白ける。ラヴァンの11変化は唯一「メルド」が破壊的だが哀しいかな焼き直しなのだ。[投票(3)]
★5セブン(1995/米)猟奇な刺激やアクションのキレも図抜けているが、曇り空に雨がしとつく特定されぬ都市の構築が付与する寓意性が、シリアルキラーを単なる事象から神話的な領域へ昇華させる。又、反転の白昼荒野で行きつく帰結はギリシャ悲劇の現代での高度な復古にも思える。[投票(3)]
★3千年の愉楽(2012/日)神話的に撮られるしかないはずのサーガなのに、相変わらずにサクサク綴られ若松のやっちゃいました感に苦笑混じりに嘆息。高良の後家との絡みのエロスの片鱗に全盛期の今村級の追い込みを渇望した。血に纏わる物語なのに血反吐地獄には遠いのだ。[投票(2)]
★5フライト(2012/米)社会的逸脱者が特定分野で秀でるという序盤のテーゼは心地よいまでに反転され映画は転がり続ける。複数のジャンル映画の様相を横断しつつ行き着いた50年代的モラリズム。そのド真ん中を射抜く確信に心を射られた。映画は時代の欠落を照射するという希望。[投票(1)]
★4追悼のざわめき(1988/日)白黒16ミリで延々と続くハイテンションのグロは振り切れて世界が裏返るでもなく閉塞世界の地獄に沈殿する。モラリズムの破壊が掟破りにコードを超える為だ。結局その越境度合いの凄まじさに諦観するだけ。蹂躙されるマゾヒズムを喚起するドラッグムービー。[投票]
★4愛、アムール(2012/仏=独=オーストリア)捻りも無い老老介護映画とも思えるのだが、それでも、感情を抑制し事の進行を淡々と凝視する精緻さには引き込まれる。鳩とトランティニャンの引き芝居の長廻しこそハネケの真骨頂。過酷な帰結のあとの黄泉への誘いの陶然。随分優しくなったもんだ。[投票(2)]
★3草原の椅子(2013/日)巧く廻らない人生に於いて、今一度、人間関係を形式から整えることでリスタートしてみればという提言であり、夫婦と親子と友人が新たに形成されるのだが、今の時代、この衒いの無さは寧ろ有りではと思わせる。肯定的で前向き。パキスタンは方便に過ぎないが。[投票]
★4ニーチェの馬(2011/ハンガリー=仏=スイス=独)凄まじい強度と吸引力を持った画面の連続だし、ワンシーンを2カットで描ききる潔癖さの一方、辺境ロケセットの家屋と井戸の距離の絶妙や過剰なまでの風への拘泥。ただ、こういう終末観は目新しくなく、又30分で語れる内容を5倍に伸延させた感が拭えない。[投票(1)]
★5家族ゲーム(1983/日)盛り込むではなく削ぎ落とすアプローチで60年代ゴダール的ポップへの回帰が図られた上でボソボソ声の優作が止めを押す。十三さおりの硬軟助演の妙もハマり全てが理想的な上、ブニュエルな晩餐から終末示唆の午睡。神業的な出来だ。[投票(3)]
★3バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!(2012/米)売れ残ることのヒガミや焦りがクローズアップされることもなければ、ドレスをめぐるスッタモンダの女版バチェラーパーティーが弾ける術もない。表層で漂う女子たちに未来はあるか?徒労感だけが残る映画だがキキが可愛いけりゃあ、わしゃ満足でごわす。[投票(1)]
★4レッド・ライト(2012/米=スペイン)閉じた世界での刹那な人間関係の救われなさ。そういうマイナー領域に目線を向けるコルテスは全く好ましい。切ない情感が否応無くダダ漏れ来るウィーバー軸の前半に比し、後半のデ・ニーロは軸を転換させて行ってこいを納得させるに弾け度不足。[投票]
★3ドン・サバティーニ(1990/米)ブランドの自家パロディは気恥ずかしいを通り越し自虐的で侘しい…のだが、動物ネタの弾けなさも致し方ないという弛緩世界で、結局その自虐しか見所無い微温コメディ。全般な作りは、まあ普通に良く出来ていて退屈はしない。底上げされるメソッドの賜物。[投票]
★4大いなる西部(1958/米)笑ってしまうくらいな大構えがお茶目。新旧や東西の対立軸を錯綜させた構成は見事だが、旧世代の終焉による収め方が性急過ぎ。シークェンスの頭に何度か置かれたカウボーイ達のダラな日常。ワイラーのこういうリアリズム志向が歪な逸脱を付与し好ましい。[投票(1)]
★4ジャンゴ 繋がれざる者(2012/米)キル・ビル2』に類した語り口は闊達な一方で説明的リアクションショットが気になる。臨界寸前の腹の探りあいは相変わらず見所だが、破壊的に越境するでもなく良識コード内で納まる。肥えたタラの今後が危ぶまれるが、名優の腹芸が寄与し踏み止まった。[投票(3)]
★1女ドラゴンと怒りの未亡人軍団(2011/中国)宝塚もどきの熟女連のチャンバラカンフー学芸会ごっこを見せられ続けることで、怒り→諦念で本来済む感情バイオリズムが揺り戻し、頂上的不快領域で高位安定してしまった。大体が優等生ジャッキーが絡んで未亡人のエロ要素がゼロなのが全ての敗因なのだ。[投票]
★5アイス・ストーム(1997/米)エゴヤン的退いたアプローチが転じて終盤のカサヴェテス的に肉を切る展開に迫るあたりで醍醐味は充足されるが、更にラストで反転されるうっちゃり展開には世界が変じて全てが許容可能となる。前作に続き連チャンされるアン・リーの珠玉のラスト。[投票]