★3 | カフェ・ソサエティ(2016/米) | 一種の批評精神に独特の諧謔嗜好が加わるアレン掌中の語りは影を潜めメロウな情に流れる。他者を語るにシニカルな奴の自己愛は無様。初期『マンハッタン』と同質でも技法のエッジは消失。ストラーロとの初タッグもデジタルの平板さだけが浮き上がる。 | [投票(1)] |
★4 | ザ・コミットメンツ(1991/アイルランド) | プレイヤーではなくマネージャーを主役にしたのがドロ沼のようなアーティスト地獄から映画を解き放ち観る者に一抹の救いを与える。でないと、クスんだダブリンのマイナーバンドの挫折話を、こうまで気持ちよくは見れなかった筈だ。楽曲も堪らんくらいに骨太。 | [投票] |
★5 | おとなの事情(2016/伊) | ありがちコンセプトながら展開は怒涛。納得リアクションの役者陣と闊達な演出はサイズの引き寄りの構成がスムーズかつダイナミック。ほぼグッチャグチャになってしまった人間関係だがお互いをだまくらかしてやってく。イタリア映画らしい詠嘆的ポジティブさ。 | [投票(1)] |
★2 | プロミスト・ランド 青春の絆(1988/米) | リセット出来ない失敗人生の無常観が泣かせる映画ではあるが、とりたてて起伏のあるストーリーでもなく淡々と進行し終わってしまう。これといって際だつ部分も無く華もない。「私」を垂れ流さないだけましとも言えるが客体化できる他者視線の欠如が決定的。 | [投票] |
★5 | フリー・ファイヤー(2016/英=仏) | ワンシチュエーションのドンパチ劇を描くに意表つく展開とか大仕掛けハッタリとかを使わない。設定だけでもたせている。IRAの武闘派にブラックパンサーの残党&ジョン・デンバー。時代とキャラと環境を決めれば映画は自走する。そういった確信は潔い。 | [投票(1)] |
★3 | バルタザール どこへ行く(1964/仏=スウェーデン) | クロケの白黒撮影は完璧に美しいが児童映画にでもありそなロバの受難物語に人間界の無慈悲を対比させるなら今少しの劇的誇張もやむを得なかったのではなかろうか。無表情な目をして立ち尽くすバルタザールだけでは素っ気無さ過ぎて心に全く沁みて来ない。 | [投票] |
★4 | バージニア・ウルフなんかこわくない(1966/米) | こいつらどんだけ胃強いねん。深夜1時のパーティ開けから未明まで飲み続けで罵り苛み合うハイテンションな荒み。いきつくとこまでいった事件後の夫の予想外行動を契機に明かされる心の深淵に横たわるトラウマ。胡散臭いがリズ・バートン故の説得力。 | [投票(2)] |
★4 | じゃりン子チエ(1981/日) | 『ハイジ』なんかで培った徹底現地ロケハンを大阪に導入し写実の中の虚構とナンセンスが際立つ。時折見せる戯画的なチエの横顔がリアル少女してるのが高畑の趣味か…。限り無くバカな父親と果てしなく優しい母親がいる桃源郷。観覧車の場面は涙ものだ。 | [投票(2)] |
★4 | 最高殊勲夫人(1959/日) | 高度成長を背景に我が世の春を謳歌する男女は皆とことん前向き。求愛し振られメゲず2股3股当たり前で競争大好き陰々滅々としたとここれっぽっちもナッシング。シャレにならぬ下世話な内容だが引っ張りまくって最後の最後に結局それ?な一点突破の作劇強度。 | [投票(3)] |
★2 | 時計じかけのオレンジ(1971/英) | 勿体ぶって終始虚仮威しをカマしてるが実はハッタリばっかりであったという脳内構成映画。舞踏めいた殺陣の胡散臭さと超広角レンズにコマ落としの映像幼児性はアナーキズムの敗北を戯画化するだけ。そこには、真に撃つべき対象への畏怖が欠落しているのだ。 | [投票(1)] |
★3 | 無限の住人(2017/日) | 長丁場の大乱戦を一応はダレず構築し切る三池の技量だが、にもかかわらずつまんねえのは本質新しいもんが何もないから。構成も破綻してる。仇討少女の思いは逸刀流一派と公儀の確執の中で雲散しカタルシスが生まれよう筈ない。死なないという設定も難儀。 | [投票] |
★3 | 終電車(1981/仏) | 50年代ロマネスクの主要舞台であった大戦下のパリに舞台を設定し文句無しのスター2人を主演に迎えて極めつけのメロドラマになるかと思いきや、2人の男の間を揺れ動くドヌーブが何考えてるのやら解らないトリュフォーらしい曖昧さがイライラする。 | [投票] |
★5 | スウィート17モンスター(2016/米) | 失恋と妥協の普遍な真実や不寛容ゆえの居場所探しは有りがちだがヘイリー・スタインフェルドの見てるだけで一瞬たりとも飽きぬ太い眉毛とがっしり体躯のアンビバレンツ。棒立ち姿が絶品。母娘と兄妹という2つの関係への真摯な言及が奥行きを広げている。 | [投票(2)] |
★3 | ザ・ワン(2001/米) | リーの体技にCGを組み合わせたバトルが思いの他彼の技を殺しておらず巧く機能してる。2役の処理も粗が無く丁寧で好篇だと思うがストーリーが新味に欠ける。土台、絶対悪が自分自身ではエモーションのベクトルは拡散するしかなく思い付きの域を出ない。 | [投票] |
★3 | 人魚姫(2016/中国=香港) | 『西遊記』に感じたCG依存の危うさは加速し映画への姿勢が怠惰に感じる。『少林サッカー』的な女性の異形性への偏愛と笑いのめす加虐性の混在は復活したが、『カンフー・ハッスル』的な圧倒的殺戮パワーへの畏怖は減衰した。ババア人魚がパワー不足なのだ。 | [投票(1)] |
★4 | カオス(1999/日) | 正直凄く面白いアイデアでもないし中田演出は中谷美紀からエロスを抽出しようと躍起になっているが未だ力量不足の感がある。だが、もどかしいほどの遣り切れなさが横溢し随所でヒッチ乃至は伝統的ファムファタ−ルへの目配せがサビを効かせてる。 | [投票] |
★5 | 未来よ こんにちは(2016/仏=独) | 怪物化を経て不思議ちゃんおばさんとして余裕のフィルモグラフィを重ねるユペールの到達点。不運・不幸の釣瓶打ちに少し枕を濡らしたとしても前を向いて又歩きだす。能面のような無表情の天然は唯一。母親役のスコブもいい。この人も一種の怪物です。 | [投票(2)] |
★2 | グース(1996/米) | CGを使わぬ本物の雁の飛行シーン等そりゃあ大変な苦労だったであろうことは解るが、それが手軽な数多の映画のシーンをトレースしただけに感じられて努力が報われてない。アンナ・パキンの据わりも今一な面白みの無い優良児童&動物愛護&環境保護作品。 | [投票] |
★5 | パッセンジャー(2016/米) | 人非人行為で得た誰憚らぬヤリマン天国から急転直下の凋落。以下この映画の感情の流れは男も女も徹底的に納得できるロジックに基づいておりシンプル且つ強固。スッピン系おぼこ顔とイケイケメイク系を往還するジェニファーも満喫。セット美術も秀逸だ。 | [投票(5)] |
★4 | 冬の旅(1985/仏) | 出生由来やよくあるトラウマ等の帰納法的帰結ではなく、唯ひたすらに事象を演繹的に描くことにより自ずと浮かび上がる少女の強烈な自我と心の底まで冷え込みそうな孤独。一種の絶対映画の域に達している媚びの無さだと思うが余りに救われない気持ちになる。 | [投票(2)] |