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[コメント] そこのみにて光輝く(2013/日)

高橋和也の狂気の物語でもある。指の臭い嗅がせるか普通。ああいう上役ってどこにでもいるものだが、そうか奴らも狂っているのか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







最初に詰まらなかったところを云うと、主人公が自分を切り刻む姿勢に欠けること。私小説じゃなかったのか原作。前半、鉱物のイメージが悪夢とともに幾度か提示され、もしかしてここからジル・ドゥルーズの超人論でも展開されるのではないかと変に期待したのだが、何のことはない過失の事故をひきずる鬱状態というだけで、それも周辺事情が変わればあっさり克服したりする。ラストも恰好つけ過ぎだ。役者は熱演だが報われていない。

一方、池脇千鶴の造形は凄い。この後半に果てしなく加速する公衆便所的な振る舞いを、ラストの笑顔一発で聖性に転化する美しさは、ブロック塀にうずくまり泣いている伊佐山ひろ子とともにロマンポルノの最高の瞬間が思い出される。いや、本作に比べたら『マル秘色情めす市場』の天窓からの曙光ですら、大袈裟に見えるではないか。しかもこのラスト、殺人未遂まで愛だとスレスレの線で告白しているとも取れる(元気だった頃の父親との思い出話が全編にわたって効いている)。これは全く私小説でしかありえない世界観である。

方々端折られているのだろうが、いい科白があったのは原作の力なのだろう。読んでみようと思う。失業中はパチンコと散歩というスタンスは個人的に勉強になった。達夫の事故の告白に千夏の切り返しが「だから私ぐらいがお似合いって訳?」。家族を大事にしろと云われて高橋和也の捨て台詞「大事にしているから狂っているんだ」(だったかな)等々。この直前の場面の、滴り落ちる鼻血の描写がいい。『オカンの嫁入り』と同じ監督とは思えない出来、といったら失礼ですね。撮影も照明も『海炭市叙景』のスタッフ。藤井勇のローキーの照明はここでも抜群だと思う。

(評価:★4)

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