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★5肉体の冠(1952/仏)水も滴るメロドラマ。川の流れはとろりと甘く、木漏れ日は優しく、夜の町はいかがわしく、策略は容赦無く、死はただ痛ましく…。昔の白黒映画は何故こうも艶めかしいのだろう?[投票]
★5モンティ・パイソンの ザ・ラットルズ(1978/英)過去を振り返る時はこれくらい余裕と洒落っ気を持っていたいもの。称えているようで実は完璧におちょくっている立ち位置が絶妙。ビートルズの四人も草葉の陰で喜んでいるだろう。[投票]
★5ワイズマンとのピクニック(1968/オーストリア)終末のピクニックには笑い声も息遣いも無い。普段は主人の下僕になっている「もの」達が静かに遊びに興じるだけ。黄昏の郊外。そこはかとなく漂う惨劇の予感。さようなら、人間。[投票]
★5デッドマン(1995/米)アウトサイダーを描く映画作家は少なくないが、ジャームッシュのように独自の語り口を持っている人は少ない。彼はしばしばわかり易い既存の物語の枠からはみ出してしまう― [review][投票]
★5マンハッタン(1979/米)白黒の美しいスナップに、「NYの一番良い時は今(1979年)で、あとは下り坂だ」というウディ・アレンのクールな認識が窺える。彼らしい機知溢れるメロドラマだが、その底には深い無常が漂う。[投票]
★5フェノミナ(1984/伊)光と闇・生と死・善と悪・美と醜…相反する要素を組み合わせて、美しくもグロテスクな映像を作り上げたアルジェントに脱帽。「超常現象」というタイトルには二つの意味があって― [review][投票]
★4運び屋(2018/米)何かが終わってしまった気配は濃厚にある。誰もがこわごわゆく「その後」の地雷原のど真ん中を、当人だけはスタスタ歩いて、しかも一番大切なものはちゃんと最後まで待っていてくれる。ご都合主義? いや、ホラ話なのだ。それがご愛嬌というものなのだ。 [review][投票(9)]
★4地獄の黙示録(1979/米)鳴り響くワルキューレとともに解き放たれる攻撃本能。見境のない凄惨な暴力。超現実的なまでに壮大な浪費。正気を失ってゆく兵隊たち…。彼らを狂わせたものは何だったのか?― [review][投票(9)]
★4グラン・トリノ(2008/米)ロマン主義に生きロマン主義に死す。元々そんなものが成り立たないことはイーストウッド自身が知っている。それは時代遅れの優雅な遊びなのだ。古臭いものこそが格好いいのだ。 [review][投票(7)]
★4タワーリング・インフェルノ(1974/米)9.11後の眼からすると甘さはあるが、それでも来るべき世紀の不吉なヴィジョンを先取りしていた。何か悪いことが起きそうだ、という1970年代アメリカ特有の空気感は的中した。ミニチュアのグラスタワーを仰角で映すカットが前衛芸術のごとき不気味さでコワイ。 [review][投票(6)]
★4イースタン・プロミス(2007/英=カナダ=米)クローネンバーグはいつも「内なる異形のもの」を描くが、今回のそれは「ロシア」。暗さ、厳しさ、忍従、それらが故の深い憂愁。黒革の長外套とは、このような男のためにこそある。[投票(6)]
★4ブラックブック(2006/オランダ=ベルギー=英=独)レジスタンスに身を投じたヒロインの前に広がる薄暗闇。ヴァーホーヴェンの映画らしく、これは戦いの物語だ。その敵はナチでも裏切り者でもない。神なきこの世の不条理なのだ― [review][投票(6)]
★4イニシェリン島の精霊(2022/英)「内面」などというものとは無縁だった男どもが、突然それに直面してうろたえる。「はじめての一年生」のように。その痛々しいまでの武骨ぶり。ギザギザばかりの風景描写も良。ようは『ライアンの娘』の男性版なのだが、結末は正反対。やはり男はバカなのか。 [review][投票(5)]
★4アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル(2017/米)「底辺娘どたばたフィギュア戦記 〜血煙り純情篇〜」。ヤサグレた態度の裏に、痛いほど何かを切望する可憐さが潜んでいる。これを観て、あ、私だ、と思ってハハハと笑った人は結構いたんだろう。なら、アメリカは悪い国ではない。良い国かはしらない。 [review][投票(5)]
★4ホワイトハンター ブラックハート(1990/米)弱い心の持ち主だからこそイーストウッドは格好いい。躊躇うだけの脆さを持つ者は現実では敗者となる。しかしそこから彼の高貴なるお伽話は始まる。美しき反撃は開始されるのだ。 [review][投票(5)]
★4チェンジリング(2008/米)物語をドライヴさせる馬力には眼を瞠る。イーストウッドの戦いはより容赦無く、より内面的な場所で戦われるようになっている。母親の真っ赤な唇は受難者の流し続ける血の印だろう。 [review][投票(5)]
★4娘・妻・母(1960/日)成瀬の非情の描写が冴える。日常のあれこれを淡々と写しながら、身の置き所の無い人々の生き辛さを浮かび上がらせる。台詞の端々にチラつく残酷さに唖然、そして痺れた。 [review][投票(5)]
★4「女の小箱」より 夫が見た(1964/日)色と欲をめぐってカラフルな男女が闘争するピカレスク映画。と同時に、あるべきモラルを追求する観念ドラマでもある。日本におけるルネサンスこそ、戦後派・増村の主題だった。[投票(5)]
★4パットン大戦車軍団(1970/米)野人にして詩人、軍事的天才にして政治的痴呆、欧州かぶれの洒落男にしてアメリカの暴言オヤジ、(戦争ではなく)戦場の非情と純粋に魅せられた男の珍道中。じゃなかった、一大叙事詩。[投票(5)]
★4枯れ葉(2023/フィンランド=独)カウリスマキは勝てそうにない側に賭ける奴で、戦争がおきようが失職しようが、ロマンの方に張るという意思は強固だ。そのダンディズムが古くさいすれ違いメロドラマに息を吹きこむ。今どきタバコをバカスカと吸う映画を撮る非順応主義的態度も称賛に値する。 [review][投票(4)]