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[コメント] クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲(2001/日)

津嘉山「クロス、オーバー、イレブン。」正種と、ハスキーな小林愛が最高。
4分33秒

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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1960年代後半生まれ。万博についての知識はあるが、当事者的な思い入れがないので、前半は正直言ってイマイチ。事実、場繋ぎ的シーンが多いような。前半あれだけ活躍したしんちゃんの友人たちが、後半完全に忘れ去られてしまうところがちょっと物悲しい。意図的に「出さなかった」のかも知れないが、じゃあ前半はなんだったの?魂のこもっていない子供向けシーン?という気がしてしまう。きっとそうなんだろうと思う。後半は完全に大人向けだ。後半にこそ監督のいいたいことが詰まっている。

万博はピンと来なくても、あの「夕焼けの街」なら、より幅広い世代に分かる。…最近、あんな夕焼けの中に自らを放っておけるほど「自由」な時間を、私は得られていない。残業残業の毎日で、夕焼けなんか会社のトイレの窓からしか見られない。…主婦だってそうだ。夕方なんて、洗濯物取り込んで買い物行って食事の用意して風呂沸かして…なんていう、一番アワタダシイ時間ではなかろうか。…オトナになると、夕焼けを見る回数がぐっと減る。だから夕焼けは子供の頃の記憶を呼び覚ますのだと思う。オレンジ色の光線に照らされる景色。…舗装されていない路地、木の電柱、トタン板が貼ってあるごみ箱、裸電球がまぶしい商店街。耳には豆腐屋のラッパの音、鼻にはカレーの匂い…。ヒロシのセリフ、「このままじゃ懐かしさで頭がどうにかなりそうだ!」(うろ覚え)は、観ているこっちもその通りだった。

そしてケンとチャコ。純粋さ故、真摯さ故に敢えて儚い夢に賭けてみた男と女。この二人をアテる声優が、もうドンピシャ過ぎる。スタンディングオベーションものだ。特に津嘉山正種。個人的には、もしケンがこの声でなかったら、はっきり言って評価は3だ。小林愛も良かった。彼女のあの声だから、ヒロシとしんちゃんにパンツを見られたときの恥じらいが活きてくる。事ある毎に、日本の声優文化の素晴らしさと、その「宝」を全然うまく使おうとしない「もったいなさ」を口にしてきた私だが、この監督のセンスは信じられると思った。

ケンとチャコが手に手を取り、夢と愛を永遠のものにしようとするクライマックス。その行く手を阻んだのは、神の使いか。…ある意味ベタなシーンだが、これでいい。未来を紡いでいくということは、やはり子供を育てるということに尽きる、と個人的には思う。「やっぱり死にたくない…!」と言うチャコもこれでよし。健全な精神を持っている証拠だ。そんなチャコを怒るのではなく、肩を優しく抱き寄せるケン。二人の愛は本物である。

…かつて、自殺願望なぞを抱きつつ暗い青春時代を過ごした私だが、時は経ち、今は3人の子持ちになった。子供たちの親になれたことは実に幸福なことであり、子供たちの成長は、私の生き甲斐であり、誇りである。

ケンとチャコの「未来」を祝福しよう。彼らなら大丈夫だから。

(評価:★4)

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