[コメント] 遊星からの物体X(1982/米)
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『エイリアン』と双璧と思うが、全く対照的。あっちがゴシックホラーの様式美を持った純然たるホラーなら、こっちは無茶な設定をもって泥臭い人間ドラマを絡ませながらワイルドに展開していく、まさにジョン・カーペンター映画。
最も対照的なのは結末じゃないだろうか。リプリーというヒロインがたった一人になろうとも何とか生き残った『エイリアン』の結末がすっきりとした解決であったとすれば、この映画のラストはまるで『地獄の黙示録』のようだ。思えば、ジョン・カーペンター映画に普通のポジティブなヒーローは出てこないが、スネーク・プリスケンよりも更にストイックでクールなこのカート・ラッセル扮する主人公が、すっきりとした結末とはほど遠いダークな余韻を残すこのラストは、静かに、こう告げているのではないだろうか。
「戦いは終わってなんかいない…。」
そう、ジョン・カーペンターの映画は、いかにディテールが笑えようと他のどんなホラー映画より怖い。何故なら、彼が描く戦いは終わらない戦いだからである。
何故、終わらないのか?
エイリアンは、人間にとって、純然たる化け物であり、人間との接点は、物理的にあったとしても精神的にはなかった(少なくとも3までは)。だが、ジョン・カーペンターの作り出す化け物は常に人間の中に溶けこむ。物理的に溶けこみ、精神的に犯し、ひいては人間社会そのものを内部から犯そうとする。…彼の社会そのものに対する眼差しが反映されているのだろう。人間社会の負のエネルギーが凝縮されているような気さえする。だからこそ、戦いは終わらない、恐怖は消えていかないのだと思う。
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