[コメント] 告発のとき(2007/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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トミー・リー・ジョーンズの「顔面」がますます凄いことになっている(劇中でも「悪魔のような顔」なんて云われてますね)。ジョーンズの顔面の捉え方の凄みにおいては『ノーカントリー』の上を行く。これは徹頭徹尾ジョーンズの顔面映画だと云い切っても差し支えない。シャーリーズ・セロンもいい。そのランニング・フォームの格好よさには思わず惚れないではいられない。助演陣ではやはりジェイク・マクラフリンが称賛に値するだろう。彼がジョーンズの息子殺しを淡々と告白するシーンの空恐ろしさ・やるせなさ。テーマ的にもムード的にも映画の核を成すシーンを立派に演じ上げている。
暗めの色調でまとめたロジャー・ディーキンス撮影も相変わらずすばらしい。彼のカメラがサスペンス醸成に貢献していることは疑いなく、さらには映画の「格」を押し上げる働きをも担っている。
ところで、私が冒頭で半ば無理矢理にイーストウッドの名前を出したのは、何も私がイーストウッド大好き人間だから、という理由のためばかりではなく、この映画がイーストウッドに通じる「星条旗」の主題を受け継いでいるからだ。しかし、これは本当に「イラク戦争」を背景にした物語なのだろうか。それは「ヴェトナム戦争」を背景にしてもまったく同じ物語を語りうるのではないか、という意味なのだが、むろんそのことはこの映画の欠点ではない。戦争がもたらす人心の荒廃という問題はヴェトナム以来まったく解決されていないというのがハギスの認識なのだろう。いや、話はヴェトナムどころではないのかもしれない。本来アメリカ合衆国が逆さの「星条旗」を掲げないでもよかったような期間が建国以来どれほどあったというのか、知れたものではない。
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