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[コメント] ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ(2001/米)

ヘドウィグの「青い鳥探し」は、一番あっけないカタチで終わった。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ヘドウィグは、昔人間が「ふたりでひとり」のカタチで生きていたことを信じている。だから、少年時代から彼の「片割れ」探しは続いている。

東独の少年は、米軍兵士を信じ、彼の片割れと思う。だから母の名前をとって自分の名前を、そして自分の一物を犠牲にした。その結果、アングリーでアグリーな彼の一物の残存物は残り、兵士は彼のもとを去っていった。兵士は彼の片割れではなかった。

そして、ヘドウィグになった彼はトミーと出会う。彼を信じ、片割れと確信するがために、彼は金髪美女のようなカツラをかぶり、彼自身の存在を捨てる。だがトミーは彼を裏切り、あまつさえ彼の歌を奪ってロックスターにのし上がる。トミーもまた彼の半身ではなかった。だが、ヘドウィグは彼に未練を残し、その後を追って全てを失ってゆく…。

まるで現代の「青い鳥物語」だ。だがヘドウィグは自らの半身をひたむきに探しつづける。それがゆえに彼は没落する。

だが、「青い鳥」がそうだったように、彼もまた真実に気づくことになる。ヘドウィグは彼以外の何者でもなく、彼の半身は最初からいなかったのだ(トミーが理解を示すような素振りを見せることはあっても)。 ヘドウィグはステージ上でカツラを脱ぎ捨て、乳房をねじり取り(蜷川『王女メディア』!)、ひとりの男に立ち返る。金髪のカツラをかぶってヘドウィグになった相棒をその場に残し、彼はステージを立ち去る。

ラスト。もはや全裸になって何物も隠すことなく夜の街路を歩く男。彼は「青い鳥」を探すことのできたひとりの孤独な男だ。エンディングに流れる「愛の起源」のメロディがなんとも切なく、やるせない。

どこまでいっても、人間はひとりなのだ。

(評価:★4)

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