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[コメント] デビルマン(2004/日)

劇場で鑑賞。前の席に座った客がクスクス笑う声が聞こえてきた。どうせなら、みんなでガハハハーと大声で笑って見たかったなあ。マナーを大切にするのは難しいです。
空イグアナ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作は大好きですよ。あまり漫画を読まない僕が言うのもなんですが、生涯読んできた漫画でベストです。それがついに実写化、ということですが……まあ、見る前から散々な評判を聞いていたので、覚悟はできていました。トンデモ映画を笑って楽しむことも、これまでやってきたので免疫もできていました。あくまで胸焼けムカムカがないというだけであって、レビューを書けば批判ばかりの文章になりますが。

「最初からあいつは変だった。」冒頭のこのナレーションからして、ダメだ、って思いました。そりゃね、了は原作でも初登場時から異様な雰囲気を持っていたし、途中で異常な行動に走ったりもするけど、それでも一緒にデーモンと戦う、明の味方なんだぞ。了が明を、そして人類を裏切るシーンは、それなりにショッキングなんだぞ。

了だけじゃない。明だっておかしい。デーモンと合体する前の明は、「強く成りたい。」なんて言って、バーベルを持ち上げてる。明はそんな奴じゃないよ。原作のしょっぱなに描かれているじゃないか。美樹が運動部に入ったら?運動神経いいじゃん。というのを明は、得意不得意の問題じゃなく、性に合わないから、と言うのだ。合体前の明がおとなしかったのは、肉体的に弱かったからではなく、精神的に穏やかだったからなのだ。だからこそ、デビルマンとして生まれ変わったときの豹変ぶりに、了が「あれがあのおとなしくて臆病な明か?」と驚くのだ。

美樹も違うぞ。原作での乱暴な性格はどこへ行ったんだ?ショッピングモールでは、合体前の明とラブラブ・モード全開。合体後は、明が超人的な能力で不良をやっつけるのを見て、驚くこともなく、「かっこいい。」と笑顔で言う。…どうもよくわからん。美樹は明のどこに惚れてるんだ?原作では、合体前は弱虫の明をからかいながら仲良くしてたみたいだし(たぶん姉さん気分で世話をやくこともあったんだろうな、と想像できる)、合体後はその強さとワイルドな態度に惚れるところをちゃんと描いている。合体前には、不良と戦えない明に腹を立てるシーンがあるし、合体後には、明を見て「前よりもよくなった。」と言うのだ。明のことが好きだが、おとなしすぎるところが不満だったというのをちゃんと描いているのだ。

キャラクターがダメなら、ストーリーもダメ。シレーヌとの戦いはあれで終わり?2時間という枠に閉じこめるために圧縮したんだとしても、もうすこしマシな終わらせ方をしてくれよ。原作での壮絶な最期はどうなったんだ?(個人的には、富永愛というキャスティングは気に入っている)

ジンメンはもっとひどいぞ。対シレーヌ戦では、一応、空中戦を描いていたけど、ジンメンは一発殴って終わり。「俺は食っただけだ。お前だって生きるためには食うだろう?」というのも、馬鹿な奴の下手くそな言い訳にしか聞こえない。原作では、あの「殺すのは悪いことだが、食うのは悪いことじゃない。人間だっておとなしい牛や豚を食うもんな。俺は殺したんじゃない。食ったのさ。」という台詞は強烈な皮肉だったはずなんだけどなあ…。しかもジンメンを殺せば、甲羅にうかびあがった人間も一緒に死ぬ。つまり「ジンメンは悪いことはしていない。人間を殺したのはデビルマンだ。」というリクツ(ヘリクツと言った方がいいか?)が成り立つところが、後味の悪さを残していたと思うんだが。

漫画五巻を2時間に圧縮したんだから仕方ないと、割り切ることはできない。だったら何で、原作になかったシーンが、あんなにたくさんあるんだ!

特に無駄が多いのは、デーモンと合体した少女・ミーコ。確かに原作にも登場した人物ではある。でも、前半、明と了がデビルマンになろうとする決断する過程を、すっぱり省略してしまったのに、どうしてミーコが合体した自分を受け入れるまでを、みっちり描くんだよ!そして悩みを乗り越えた彼女が日本刀とマシンガン持って戦い出すと、まるっきり違う漫画になってしまう。「美少女戦士ナントカ」という題名が似合いそうなシーンである。

聖書の説明も、ダンテの話もまったくなかったよな。悪魔が氷に閉じこめられてるって話も、ハルマゲドンの話も(原作のハルマゲドンで、サタンが七つの首の怪獣に乗ってたところ、うまいなあと思うんだけど)。サタンが天使のように美しい理由も説明されなかったな。そのサタン=了は教会に入って来るなり、「神はいたか!?」 おいおい、あんたの両親が”神”だろう?まあ、原作でもこの小宇宙をつくった、という説明がされているだけだから、どこまで地球の運命を操ってきたかは定かではない。映画で了が言う”神”は人類の運命を操る存在のことだから、原作と違う意味だというのはわかる。ただ、映画ではこの辺の設定はどうなっていたのか。原作にああいう解説がある以上、ちゃんと説明した上で”神”という言葉を使ってほしいところだが。

生き残った二人を映し、希望を残すラスト。これがもうダメ。人類が滅んだ中で、明と了が二人っきりで寝そべっているから感動できるんだよ。本当に監督はあの少女に同情的なんだな。

「原作は原作、映画は映画だ。」という声もあるかもしれないが、それ以前に映画として崩壊している。前半、デーモンと合体したミーコがいじめられるシーンでは、3人のいじめっ子が、1人ずつ順番に出てきて悪口を言う。……これはギャグか?こんな演出を真面目にするなよ。(吉本のギャグに”ローテーション・トーク”というのがあったなあ) ついでに言うと、そのいじめっ子が、デーモンと合体した腕を見ただけで怯えるというのも大げさすぎる。体液で地球儀を溶かすところまで来たら怯えるかもしれんが、腕を見ただけだったら「何これ、キモーイ!」って言ってさらにいじめるだけだろう。

ごめん、みんな。あまりのヒドさにかえって楽しんじゃったので、+1点で★2にさせて。

(評価:★2)

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