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[コメント] デビルマン(2004/日)

もし点数にマイナスが付けられるんだったら、いくらでも付けてやりたい。少なくとも、これから那須監督の名前を見ただけで不快な気分になるのは確定。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 劇場予告は前から結構かかっており、しかも『CASSERN』と一緒に予告がかかると、そのできの悪さというものをまざまざと見せつけてくれていた。何せCGパートと実写パートの画面の乖離が無茶苦茶で、予告でありながらも、主人公伊崎の大根ぶりが分かってしまっていたから。

 だから分かってたんだよ。この作品は屑だって事は。でも、あの予告は半年も前のもの。完成版ではエフェクトも変えられているだろうし、なんぼなんでもあんな予告作っておいて、どんな反響があったのか位は考えているだろう。

 ところで、原作「デビルマン」という漫画は日本の漫画界においてエポックメイキングな作品であり、それだけにこの作品の影響は多大だった。現に今現役の漫画家の中でも、この作品にショックを受けた人の数はとんでもない数に上るだろうと思える。原作者の永井豪氏も大変な強い思い入れがあるらしく、これまで何度となくハリウッドのオファーを断り続けてきた(確かにハリウッドに作らせたらあのラストは無理なのは分かってるし)。

 かくいう私自身も、TVアニメは知っていたものの、原作の圧倒的パワーに完全に打ちのめされた人間の一人。小学校の時、立ち読みで単行本読んで、その夜熱を出したくらい。現にオリジナル版、拡大版、単行本版の3バージョンの漫画本を持っていた。デーモンを介し、人間のエゴと精神のどす黒さ、光と闇との戦い。そして何より、ヒロインが殺され、首だけになってしまうと言う物語中盤の凄まじい描写。現に今、これを書いてる私の腕は鳥肌が立ちっぱなし。

 たとえどんな作品でも構わない。「デビルマン」を劇場で観られるなんて機会を逃してたまるか。かなり悲壮な思いを持って劇場へ。

 あ、あああああ、おおおおお…

 なんじゃあ、こりゃあ!

 ふっざけんなこの野郎。これが俺が思い焦がれていたデビルマンの姿かよ!

 物語駄目。キャラクター駄目。演出駄目。設定駄目。見事なくらいに全部駄目。泣きたいよ。私は。

 あんまりのショックでしばし茫然自失状態だった。

 今回、マジ怒りの波動で書かせてもらう。

 先ずキャラクター。最早いったい何でこんな奴らに演じさせようと思ったのか分からない。主役の伊崎兄弟は滑舌が悪いのみならず、完全な棒読みで、演じようとする努力すらしてない。央登はデーモンであることがお父さん役の宇崎竜堂にばれたときに「はああ」と気の抜けた台詞しか吐けない。特に酒井彩名とのラブシーンは最早開いた口がふさがらないと言うレベル。ふざけて選んだんじゃねえのか?これ。了役の右典の髪型と髪の色が出てくるたびに変わってるのも妙。このくらい統一も出来ないのか?デビルマンとなった央登といい、シレーヌ役の冨長愛と言い、メイクがはがれてる。メーキャップさえまともに出来ないとは…客演が宇崎竜堂、KONISHIKI、ボブ・サップ、小林幸子、鳥肌実とか、面白いのを出してるのに、全部見事に外ればかり。特にボブ・サップはなんでニュースキャスター?配役そのものが全部いっそ見事なくらいに駄目。

 そして舞台だけど、舞台は大きく分けて四つに分かれてる。学校とショッピングモールと明の家と海岸…って、それだけか?TV版の『ドラえもん』か!こいつは。なんつースケールの小せえ物語に仕上げてくれたもんだ。申し訳程度に世界破滅のイメージを出しても、『アルマゲドン』(1998)と『ターミネーター2』(1991)の破壊のボードをそのまんま使っただけ(しかも爆風さえも起こらず、その後も夜の待ちにはネオンが瞬き、部屋には煌々と明かりが灯される)。本来の持つ世界レベルの話をご近所恋愛ものにしてしまっていた。その端的な描写はジンメンとの戦いに描かれてるだろう。ショッピングモールでデーモン化した人間がそこにいる人間を次々食ってしまう。友達が食われてしまったことを察知した明は、何を考えたか、先ず海岸に行く。ショッピングモールで事件起こったのに、それが分からないのか?しかも海岸で大声で叫んだ後、全く意味なく海の中に入り込み、顔を海の中につっこんで…だからなんで海なんだ!殺されたことを知ったお前の感覚って一体どうなってるんだ?

 ストーリーに関しては、よく言えば「凝縮」なんだが、要は原作から特徴的なエピソードを抜いて張り付いただけ。しかも全部超適当と来てる。先ほど挙げたジンメンのエピソードだって、単に一言二言喋って背中ぶち抜くだけ。前半の山場であるはずのシレーヌとの戦いさえ、CGと実写の合成が乖離してる上に、ちょっとどつきあって、申し訳程度に明が寝転がって終わり…ちょっと待って。このエピソードだけで映画一本作れるだけの内容持ってるんだぞ。それをこの程度。しかもシレーヌがどうなったのか、まるで描かれずにおしまい。泣けるよ。ほんと。

 そんで、クライマックスが近づくと、今度はデーモン迎撃隊を登場させて人間不信と家族愛に話を持って行くのだが、この陳腐さ!大体デーモンの家だって貼り付けてる紙にはダビデの星が描かれてるんじゃないのか?もしこの作品海外輸出考えてるんだったら、これは絶対やっちゃいけなかったこと。魔女狩りじゃなくてホロコーストにしてどうするんだ!スタッフの誰一人としてこれってやばいとか思わなかったのか?

 それでラストなのだが、確かに二時間ではデビルマン軍団を作ることは出来ないのは分かる。しかし、それなら何で半デーモンの女の子をわざわざ出して、それで長々とストーリーを引っ張る必要があるんだ?あれは完全に余計。明が「一緒に戦おう」と手をさしのべさせれば、少なくとも、それらしい演出になっただろ。時間がないのに二つの物語を並行して進ませるもんだから、バランスが無茶苦茶。

 しかも、原作で最終戦争となっていたラストエピソードが、単なる明と了のくだらないCG対決で終わり。(あんなでっかい)月が割れてる説明もなし(単に『EVA』やりたかっただけか?しかも戦いが終わった後、ラストシーンでまだ人柱がうねうね動き回ってる…って、まだ最終戦争が終わってねえじゃん。ここまでひっぱっておいてこれかよ!開いた口がふさがらない。

 那須監督、デビルマンのファンを完全に敵に回したな。少なくとも、これからこの監督の名前を見ただけで絶対に映画は観ないことにしたい。監督に対し、ここまで怒りを感じた作品は、滅多にない位の怒りを感じさせてくれた。

 原作者の永井豪氏自身が役者として登場してるけど、あんな役をやるより、いっそ文句を山ほど垂れ流し、いっそお蔵入りにしてしまえば良かったんだ。

 この作品は、公開してはいけなかった。いっそ倉庫で眠らせておいて5、6年後に「幻のフィルム」と題してDVDあたりで売るべきだったんだ。その方が絶対儲けが出た。

(評価:★1)

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