コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] キューポラのある街(1962/日)

40年後の今日、制作意図とはまったく逆の意味で泣く。私たちは北朝鮮に帰国した彼等の結末を知っているのです。三ちゃん、君はがんばってるよね?
sawa:38

微妙に「左」系の匂いがする作品ではある。当時の政治情勢が随所に台詞に登場し、朝鮮戦争によって潤った中小企業の悲哀やら、男女同権やら、組合運動やら・・・差別やら。

ただそんな事をすべて吹き飛ばしてしまう勢いの女優がスクリーンにいた。彼女の芝居は驚愕する程のテクニックを持ち合わせたり、徹底した勉強によるものではない気がする。もちろん、後年発するオーラも当然まだ無い。ただそこにあるのは一生懸命なひたむきな演技だった。

この作品は現在ではふたつの意味合いでしか語られる事がない。ひとつはサユリストと呼ばれる種族を次々に輩出する源泉として、そしてもうひとつは、何の変哲もない埼玉県川口市という街を有名にしてくれた作品として現在でも市はそのネームバリューにすがっている。

だが、40年後の今日、いま再び本作品を見て、ここに平然と描かれたエピソードに涙する。時に人権団体や公的な機関が教育映画として公開する例が多く見受けられるが、「拉致問題」で揺れた今年以降はどういう扱いになるのだろうか?

北朝鮮による「帰国運動」で海を渡っていった彼等が、かの地で最下層の階級として扱われた事実が次々と明かされる今。命を賭けて国境を越えて亡命する彼等の中にアノ少年もいるのだろうか?三ちゃんはしぶとい子供だった。きっと生き延びているんだろう。

そう思わなきゃ、やってられない。映画の意図するところとは根本的に違う部分なのだろうが、今の私には三ちゃんを思うことしか出来ない。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (13 人)りかちゅ[*] ペペロンチーノ 山本美容室[*] Orpheus ロボトミー 新町 華終[*] セント[*] torinoshield[*] ナム太郎[*] ピロちゃんきゅ〜[*] けにろん[*] 水那岐[*] 蒼井ゆう21

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。