正直いって、この映画における我が姫ヒロスエはキレが無い。キレが無いだけにオレが言いたい事もキレが無い上にキリもない。限りなく優しく言えば周りがキレまくってる分だけ際立つ甘さとでも言えばいいのか。と、ペペチーさんがオレに代わってフォローしてくれてるにもかかわらず冒頭から姫批判ってのもアレだが、今作のヒロスエに限って言えば誰が見ても違和感が残りそうな演技に見えるだろうからしょうがない。愛があるからこその苦言って言えば嫌われないかな。大丈夫かな。んー、言い直すか。とすれば、この映画における我が姫ヒロスエはコクが無い…。すまんヒロスエ。かなり長いし読みずらい上に大好きだ。愛してる。

でも、いろいろ言わせて。思うに、この映画における大ちゃんの妻役ってのは、「ごく平凡な妻」って役どころだと思う。その平凡な所に非平凡なヒロスエ。もうそれだけでヒロスエにとっちゃ非常に難しい役になるし、年齢的にも設定的にも似合ってるとも言いがたく、製作側にとっても本来設定していた役柄から適役が見つからないという事を受けてのヒロスエの選択であり、役柄の変更とそれにともなう設定の変更といった付け焼刃的なキャラクタの掘り下げ方の不足感は否めない所だろう。簡単に結論を言えば、台本をいじって直すまでもなく、どうにかしてモッくんに似合う同世代からちょっと下ぐらいの奥さん探した方が良かったんじゃねーかという事だ。かなりベタにお茶くさい上にきっと真っ先に考えたであろうけど宮沢りえとか、クセが無さ過ぎて重要度も下がりまくるけど目立たなくて丁度いいと言えば石田ゆり子とか。まあ、まともな女優使う時点でごく平凡な妻っていうのが既に無理があるけど。

それに、そもそもこの映画は明らかにモッくんの映画であり、納棺士という仕事を魅せる為の映画に過ぎない。あくまでもモッくんという刺身の為に「ツマ」役のヒロスエがいるという存在枠。しかも「ツマ」は大根から成っているという相乗。もしかしてわざと大根か？いやいや、んなはずないし。まあ、ツマが刺身の引き立て役であるという事はこなしたって事か…。んー苦しすぎる。それに本当に美味しいお造りはツマもめちゃ美味いはずなんだ。ハッ！つまり、刺身がダメってことか。だからツマも活きてないと！つまりヒロスエは悪くないと！そう思うことにしよう。

とは言え、ヒロスエがなーんも考えなしで笑ってばっかりなんて次元の低い所で勝負してるわけじゃないって事ぐらいは擁護したい。実際は見えない所で色んな表情を作ってるんだ。普通に見てる人には印象残らないだろうけど。そこはヒロスエの演技だけを見る為にも劇場に足を運んだオレの目を信じて欲しい。で、オレは断言するが、実はヒロスエは別のところで勝負していた。観客に見えない所で監督とヒロスエのプロ同士の微妙なせめぎあいが繰り広げられていたのだ。無意味以上に映えるヒロスエの脚線美や胸元ゆるゆるセーターとかイスの腰かけの高さにカメラおいて平行座りさせるだとか上手な包丁さばきをみせる妻の後姿のエロスとか湯上りヒロスエのぬくもり感とか、監督がなんとかしてヒロスエをエロな方にエロな方にといやらしい目線に持っていこうとするその瞬間その一線を絶妙なかわしと魅せ方でオレに応えるその姿は監督とオレだけが楽しんだだけであってほとんどの観客にはほぼ「違和感」でしか伝わっていない。だってしょうがないよね。なんたってヒロスエがアップになる度に「はい！ヒロスエ、そこで微笑んで！」という指導でも入ったかの如くな天使の笑顔攻撃ばっかり。もうこのインパクトが強すぎて。本来、天使の攻撃は２時間に１回２回で抑揚つけるから効くはずなのに、こうも何度も笑ってしまうと文句も言われるわなーとオレですら思う。「汚らわしい！」の拒絶だけじゃ足りないって事なんだろう。もう２回ぐらい拒絶して鞭で叩くぐらい言ってくれないと。いっそヒロスエも納棺士になったらカッコ良かったのに。

て、そもそも設定うんぬん以前にヒロスエの演技表情にキレが足りないのが問題だった。で、結論でないながらも、もっと考えてみた。

今回の映画ではヒロスエは自身はじめての「妻」役（『秘密』の妻役は微妙だから）。この映画の撮影時点（2007年春）ではまだ現役妻だったヒロスエだが、リアルな自分自身の妻という立場と映画の中の妻役とではかなりのギャップがあったのだろう。少なくともヒロスエ自身が「好きな男だから悲しくても笑って背中を押してあげて黙ってニヤリと後ろを付いてゆく」という人ではない。きっと自分を好きで好きで好きでしょうがなくてダメな演技の時も良い演技の時も今までもこれからもじっと自分を見守って叱咤激励してくれるそんなアレと紙一重とも言われるような男をメタクタに好きになってくれる女神のはずだ。うん、そう信じてる。ちなみにここにいるから。まあソコは将来に置いといて、自分と余りにも違う妻役というものを演じるにあたってどうしたもんかな的な迷いがあったのか、「これだ！」という参考例的な妻演技が見つからなかったか、そもそも「平凡な妻」って何？状態だったのか。もしかしたらヒロスエの私生活自体がこんな感じなのかもしれないけど、普通、平凡な妻は家の外と中とじゃ顔が変わる。もっと家の中では俗っぽさが出るし、メイクもしないし、ジャージとか寝巻でごろりとしてテレビを見ながらガハハハと笑うし、家事の手伝いしないダンナに切れたりする。あんまり見ないにしても家の中にテレビすら無いのってあんまり無い設定じゃないですか。彼の人生がそれまでは音楽漬けだったからって事なんだろうけど、それならその妻はどうゆう日常生活してるのよ、と。ウェブデザイナーって。なんか韓国ドラマみたいなやっつけな設定だよ。裏設定をまるっきり除外した安易なっていうか軽く見られた設定で適当感が残るね。まあテレビ１つでソコまで言わんでもいいとは思うけど、これじゃ起きてる間中、台所でメシ作ってる勢いでな。いっそヒロスエがニコ動中毒とかになってて四六時中ネットに入り浸りみたいな方がまだ何か理解できる感があると思わないか？そうゆう意味では山崎さんの自宅シーンなんか緑に囲まれて、奥さんの遺影だけがあって、初老の男の孤独感であり自由さであり、そんな独特な生活感がかいま見えて素晴らしい演出だったなと思うのに。

と言っても、まあ本来、女優たるもの「イメージを自分で膨らます」のも「自分と余りにも違う」役も演じれてこそだ。当たり前だが。そこは、演じれなかった理由を別の角度から考えてみたい。

この映画公開がヒロスエの離婚という事件から半年たった今（2008年9月）にずれ込み、もともと撮影してから１年半もたっているという事が色んな意味で違和感を感じさせる事になっているのかもしれない。なんといっても、最近のヒロスエはとっても元気だ。一時の「無理してる」感が全く無い。まあ、オレがそう感じたその一時ってのがちょうど2007年の春ごろだったので、ちょうどこの映画の撮影時期に合致する。多少前後するだろうが、その時期に撮ってたドラマが「ママが料理を作る理由」とか「旭山動物園2007年」のあたりと思われる。ちなみにその前年11月に撮られていたショートムービー『Ｐｒｅｓｅｎｔｓ　合い鍵』でのヒロスエが異常に上手で可愛くて美しくて神級の演技を魅せていただけに、そのわずか数ヶ月後にあのテンションの低さ。この暖かい目でくまなく見ているオレでさえ「ヒロスエ、いいからセリフ棒読みせんで心の声を読んでオレの胸に飛び込んで来い」と、画面に向かって叫んだぐらい。なんか気持ちが入ってない、いや気持ち入れようとして空回りしてるような、そんな疲れの見える演技だったわけですね。で、その時期にちょうど山形でこの映画を撮影していたとなると、そりゃこのキレも納得できるってもんです。いや、むしろこの老獪なメンバーの中にあってよく頑張った！と。そう思う事にしたい。頑張った頑張った。

で、その後の「ウェディングロード」以降、少し元気になりＣＭも増え出して正式離婚後、オレの為に「ヤスコとケンジ」でぶち切れるまでに復活して現在に至るわけで、この弾けた現在に唐突に凹んでた頃のヒロスエがスクリーンでニヤリとされると演技的なキレの差が如実に現れるという事なのかもしれない。こう考えると、やはり2007年春に色々あったんだろうな〜と思わざるを得ないわけで、この映画でのヒロスエの出来が悪いのはヒロスエの所為じゃないよ！と。女性セブンがなんかゴシップいろいろ書いてた時期とも被るけど、それもひっくるめて岡沢くんの所為だな。きっとそうだ。そうに決定。だから姫は悪くない！と思う事にした。悪くない悪くない。

てわけで、ヒロスエが悪く無い事はハッキリしたので、この際、ヒロスエが襲われるシーンを思い出して語ろうじゃないか。

あの鶏は結局くったのかな…目は怖いよなってのは置いておいて、あのシーンは…来たね。特に腹が。腹から見える眩しいブルーが。うん、さすが滝田監督。判ってらっしゃる。これが伊丹映画だったら間違いなく「汚らわしい！」叫んだあとに、山形の大自然の中で「いま、ここで抱きなさいヨォ！」とか言ってパンツ脱いでお尻ボーンですよ。きっとモッくんが白塗りのオムツ姿でヒロスエを後ろからハァハァするんだ。いやー、滝田映画で助かった。ここぞっていう時に度胸がないというかモロよりもチラという性癖が出るというか、どさくさに紛れておっぱい揉まれた程度でほんと良かった。脱がないで見えるぐらいが一番来るね。いいなぁ。オレも泣きたいよ、ヒロスエの腹の上で。こら、どさくさにまぎれて。だーめ！電気消してお願い。とか言われてみたい。

しかし、やはり夫婦たるもの、相手がゲロ吐いた直後に号泣して胸もんでパンツ下げようとしてくる！なんていう異常な行為に対して、欲情するよりも心配するのが先じゃないか？だいいち、モッくんあのあと子供できるぐらいに頑張ったのかと思うと、そんな元気どこに秘めていたのかと。思うに、あの状況じゃ「あれ？あれれ？ごめん、やっぱ今日はダメみたい」になるに決まってるじゃないですか。男のアレはそこは実に繊細なものじゃないかと。で、そこですかさず今のヒロスエから「口でしてあげようか？」を持ってくるわけですよ。滝田監督だけに。まあ、今さらそんなセリフ言えないよと今のヒロスエなら逆に言えるって事かな。残念。まあ、何もスクリーンで皆にむけて言わずとも、今度ふたりで会った時に言ってくれれば許しましょう。そしたらホンモノの愛もキレも教えてやるぜ！金は無いけど。