★2 | 復活の日(1980/日) | 世界からの孤絶と追い討ちをかける孤独だけを念入りに描けば良かった。下手にハリウッドマターに竿刺すような前半はチープな上に無闇に暑苦しい。それが身上の深作ではミスチョイスであった。世界の終焉後を描いた鎮魂歌として稀有な作品になり得たのに。 | [投票] |
★5 | シャドウ・イン・クラウド(2020/ニュージーランド=米) | 銃座に閉じ込められた延々たるクロエの1人芝居が骨太で来襲するグレムリンや零戦への応戦も何やかんやで熟す。起動要因が男権へ抗する女性のマッチョ化ではなく母性というのが真フェミニズム。彼女の上腕筋の発達はポーズだけのフェミアクションを粉砕。 | [投票] |
★3 | 前立腺の病気と予防(1981/日) | 真面目な文化映画の振りを装いつつ、パロディとして製作されたわけでもなさそうなのに、完全に文化映画のパロディになってるところが「勢い」というものを感じさせる。そういう乗りは一生の間にそうそう訪れるものではないのだと思う。稀有な事例であろう。 | [投票] |
★3 | エルヴィス(2022/米) | 女達を脳髄から蕩かす歌唱と腰使い。ソウルが炸裂する反抗の「トラブル」。前半の2ライブシーンを佳境とするラーマンのクドいまでのケレンは時制の解体と相俟り目眩く出来。だが後半は無惨に失速する。凡化したエルヴィスの生き様を見せ切る手管が不足。 | [投票] |
★4 | おいしい生活(2000/米) | 語り口の抽斗を山ほど持つ男が「芸」を見せきる為に抑制を選択したのが心憎い。この2人の夫婦役者の掛け合いは何時間見てても飽きないだろう。至芸と言っていい。川下から拾い上げたウルマンやメイ。役者の選択が全てと言い切るだけのことはある。 | [投票(1)] |
★3 | アパッチ(1954/米) | 1人抗戦を続ける男が狩猟や戦闘のアイデンティティを捨て時代の流れに懐柔される矛先となる。愛しい女が一緒であればそれも又良しという軟派街道であるが逃避行の世界との断絶感がロマンティシズムの芳香を放つ。それが白人にとっての良き先住民だとしても。 | [投票] |
★4 | 髪結いの亭主(1990/仏) | 時間的な頃合いといい出来良い短篇小説の趣があり映画としてのバランスはパーフェクトなものだが、完璧すぎてあまりに夾雑物がなくこれでええのかと戸惑う。幾つもの謎は放置されたまま踊るしかないのかと煙に巻かれるドラッギーな西洋版狐の嫁入りな幻視譚。 | [投票] |
★3 | アンビュランス(2022/米) | 杜撰な計画が失敗して当然なら追う側の打つ手もまるで見えない体たらくで、それをベイ自慢のレシピでグリングリンの空撮とドカンドカンのカークラッシュで料理して新味の欠片もない。市警・FBI両指揮官はナイスなキャラ。終盤で迸る義兄弟の絆も良い。 | [投票(1)] |
★2 | 戦争と青春(1991/日) | モノクロームで描かれた回想場面は総じて悪くはないのだが、現代との連関に女子高生を狂言回しにするというのが及び腰に思えるし商業主義的妥協の方途にも見える。戦争というものの記憶が冷めやらないギリな時代の名匠の遺言ではあるが出涸らし感は拭えない。 | [投票] |
★5 | あなたの顔の前に(2021/韓国) | アンチドラマ叙法を脇に置きグラフィックな光彩を意識した撮影がホン・サンスの転回を思わせるが彼女の目に映る記憶の刹那な浄化として必然だった。呑み語り場の翌朝、断ち切られた縁に哄笑するイ・ヘヨン1人芝居の独壇。そして彼女を包む優しい光。 | [投票(1)] |
★3 | 無能の人(1991/日) | 石への偏愛やそれを売るという不条理がどうにも借り物臭い。何もできない・しないことへの突き詰めが不足してる。もっと影の薄い奴を主役に据えるべきだったのに竹中直人が主演も張ったので台無しだと思う。神戸浩だけが借り物臭を吹き飛ばしている。 | [投票(1)] |
★3 | 雷魚(1997/日) | 希望が閉ざされた世界で自壊を望む女とそれに共振する男が出会う。工業地帯の澱んだ用水路でのたうつ雷魚のように世界から見捨てられ呼吸をしているだけ。そういう物語の隔絶感を長焦点レンズが随所で弥増させる。そして事後の存在を消去するかのような詠嘆。 | [投票(1)] |
★3 | 赤と黒の接吻(1991/ベルギー=仏=ポーランド) | 大真面目に撮られたもので演出の力量もあるとは思うのだが、何もかも入れ込みたいと思う余りに骨子も据わらなかった。若い主人公ではなく親父世代に物語が帰結してしまう辺りが構造的欠陥。これでは散漫の謗りも免れない。民族史への思いだけではと思うのだ。 | [投票] |
★5 | リコリス・ピザ(2021/米) | 無軌道な出たとこ勝負な宴の時代は終わり足るを知るとこから新たな何かが始まる。PTAが達した思いは夜の静寂の長い下り坂の逆進行に凝縮する。70年代業界の多彩な人物群像は新たな「ワンス・アポン・ア・タイム」めいて豊穣で際立つ役者たちの目力。 | [投票(6)] |
★2 | ユキがロックを棄てた夏(1978/日) | 映画屋のふりをするのではなくトコトンに映画屋であろうとするということはアンダーグランドでは異彩を放ってもプロに混じると凡百に塗れる。日活ニューアクションへのオマージュだけでは世間は通らない。批評精神を欠いた世界がこれまた如何にも古臭いのだ。 | [投票] |
★3 | ザ・ロストシティ(2022/米) | 40年代秘境冒険譚が80年代に復刻されたそれを今更又もやる意味あるのと問われてもやっぱないやんと言うしかない出来だがサンドラ姐の為に男たちは頑張る。チャニングやラドクリフのヘタレ奮闘涙ぐましい横でブラピ良い処どりも又香しい。 | [投票(1)] |
★3 | プルーフ・オブ・マイ・ライフ(2005/米) | 天才のことは凡人には解らないという一貫したポリシーを貫けば主人公の煮え切らないような解らなさにも芯が通るのだろうが、それでは誰も見たいと思えないものになるジレンマ。父への思いや姉との確執が妥協の産物か。真摯な良い映画で好きではあるのだが。 | [投票] |
★5 | 家庭(1970/仏=伊) | アルメンドロスの流麗なカメラの縦横性と意味を喪失した「仕事」のタチ味とディスコミュニケートなキョーコ・ヤマダという飛び道具が混在するが、香港映画と見紛うジャドのゲイシャメイクの衝撃が誘爆剤となり調和に至る。帰結のほろ苦さも絶品。 | [投票(1)] |
★5 | 御法度(1999/日) | 時に自走に任せつつ下すべき裁断は怜悧に。物語内の組織統御論と大島自身の映画製作に於けるそれが理想的に同期する。画面に漂う緊迫感は久しく無かったものだ。嘗て反駁した筈の先世代のイズムに長い道のりの果てに辿り着いたそれは驚く程黒澤的。 | [投票(1)] |
★4 | ベイビー・ブローカー(2022/韓国) | 大甘設定にも思えるが棄児がどうしたら幸せになれるかの道筋を隘路を縫い希求した是枝なりの回答。未踏の次元に到達したかはともかく他流試合の醸す緊張が張りを画面に与えて今更感を払拭。喧嘩の翌朝、海風が屈託を洗い流す。鮮やかなショットの連結。 | [投票(5)] |