★4 | この世界の片隅に(2016/日) | 難事を彼女は従容と受け入れるがその確執は時代の細緻な描写が担保する。郊外都市の戦時下を描いたリアリズムが新しい。真昼間の畑での日常はあっけないほど瞬時に非日常に蹂躙される。一旦スイッチが入った途端熾烈な内面を剥きだす片渕のマグマの発露。 | [投票(4)] |
★3 | ディスクロージャー(1994/米) | セクハラという「売り」を除いたときに浮かび上がる、ギミック無い真っ当な企業内サスペンスを平凡とは思わなかった。クライトンが『ライジング・サン』と連発したこれは面白くは出来てるが、レビンソンの演出があんまり「変」じゃ無い分つまらない。 | [投票] |
★5 | 夏をゆく人々(2014/伊=スイス=独) | 姉妹にエリセの父権にタヴィアーニの養蜂にアンゲロプロスの失踪にアントニオーニといった具合に痕跡はあるがシネフィル的小賢しさは無い。少女時代の追憶は客体化され十二分に乾いてるが尚情緒的。フェリーニな祝祭と駱駝一発芸が彩り。 | [投票] |
★3 | 資金源強奪(1975/日) | 肝心の襲撃計画なぞが「絶対に成功する訳ない」と思えるぞんざいなものでクライムアクションとしては最低なのだが、梅宮の極道デカが出てきて俄然、画面は躍動を始める。汚い奴らの騙し合いを、もっとスマートに描けていたらと思うが無い物ねだりだろう。 | [投票] |
★5 | ベルファスト71(2014/英) | 非日常へと踏み込んでしまう境界が唐突にやってくる映画的導入が優れているのだが、そこから繰り広げられる展開が予想以上に複層的。70年代初頭テロリズム勃興期に世界で若者達が踏み込んでいった狂気が充満する。そして運動は保身や功利に蹂躙されるのだ。 | [投票(1)] |
★3 | 危険な関係(1959/仏) | 退廃に身を沈め愛を弄ぶ極悪カップルが垣間見せる純情(涙や心からの笑顔)が物語を有機的に転がしていかないのがもどかしい。ローアングルを駆使した演出はところにより結構冴えるのだが生気無いフィリップがモローの徹底に拮抗し得てないのも弱い。 | [投票] |
★5 | 永い言い訳(2016/日) | 妻の死で人生の形骸が顕現し間隙を埋めるべく敬遠区に踏み込むが簡単にいく訳ない。だが1周回り行き着く境地は足掻かぬ人生では勝ち取れないとしみじみ詠嘆し映画は閉じる。偏屈な人間愛。山道を登るバスの黄泉への誘いや携帯録音声の対照。技法は冴え亘る。 | [投票(2)] |
★3 | 宮本武蔵・巖流島の決斗(1965/日) | 正直5部作の4と5しか観てないので入り込めないまま終わってしまった。アクロバティックな殺陣が売り物ではないと解っててもクライマックスは凡庸だし湿気ている。達観したかのような錦之介はいいが複雑怪奇な小次郎を演るに高倉は余りに芸がない。 | [投票] |
★3 | ロブスター(2015/アイルランド=英=ギリシャ=仏=オランダ=米) | 不条理は揺るがぬ条理が確立されている世界でしか成立しない。ソーシャルな視点も欠いて所詮はお遊びめき後段でパーソナルな自己語りに変じる。何やねん居場所探しの話かいなと思ってしまうのだ。メタボ腹をさらしたファレルの油の抜け具合は大したもの。 | [投票] |
★3 | 勝手にしやがれ(1959/仏) | 手持ちノーライトカメラに時間軸無視の繋ぎや既成曲の断片使用に数多の引用など全てはここから始まった起源的価値を剥ぎ取り残るのは青臭い男女の痴話。先駆者は常に陳腐化するの例えから逃れられてるのは結局ベルモンドとセバーグの魅力があるから。 | [投票(2)] |
★3 | 博徒一家(1970/日) | 劣化跡目相続を描く『総長賭博』のエピゴーネンだが苦渋や妄念や嫉妬や怨嗟といった負エナジーをエクセレント演技で体現する鶴田に対しぶっきら棒マシーンと化する健さんの異化アプローチ。その点だけで金太郎飴任侠映画群の中で印象付けられる1作。 | [投票] |
★3 | キュリー夫妻・その愛と情熱(1997/仏) | あたかも教育テレビの連続ドラマの無味無臭さ。ノワレ校長の俗物性の匙加減までもが程良く当たり障りない。素直で丁寧な作りには好感を持てるし安心して見れるが多少は毒気も欲しかった。研究への情熱が連帯を産む世界での愛は刺身のつま的に仄かに淡い。 | [投票] |
★4 | ダゲレオタイプの女(2016/仏=ベルギー=日) | 冒頭シネスコに仏語クレジットの恰好良さ。出そうで出ぬ幽霊の奥床しさは『雨月』な日本の伝統的嗜みを備える。毒素が草木を蝕む庭園は『カリスマ』初期コンセプトで土壌の融解は『叫』の再構築か。そういうモチーフをまぶすこれ見よがしでしたたかな作家性。 | [投票(3)] |
★3 | 男はつらいよ 寅次郎恋歌(1971/日) | 池内淳子を口説く寅の台詞はシリーズ中出色の心情の吐露で、そうとしか言えない寅の身上に泣ける…が、結局逃げちまうので見る者は心のやり場に困る。同一ネタを4回に渡り繰り返し4回目で本物に転化させる脚本の巧みさ、森川信の受けの巧さも特筆。 | [投票(2)] |
★4 | 映画 聲の形(2016/日) | 障害を描くに呵責ない攻撃性を内包し観る者に己の加虐性と向き合うことを強いる。彼女の「声」こそこの映画の決意。だがその決意は主人公のディスコミュ復権話にすり替えられえる。キャラ付けは女子3名は多面性を備えているが男たちは悲しいくらいに形骸的。 | [投票(3)] |
★3 | 肉体の悪魔(1947/仏) | 不実の後ろめたさが時代背景への逆行性を加算して加速される作劇は魅せるものがある。『愛のコリーダ』まで連なる恋愛地獄ものの原点なのだろう。大戦裏話として『哀愁』と表裏の位置づけとも感じる古典。ただ、演出的には時間の解体が甘く、暗喩表現も幼稚。 | [投票] |
★5 | FORMA(2013/日) | 画面隅々まで張り詰める情動の予兆。長焦点レンズで切り取られた枠が日常を異化させるダイナミズムを生理的に知悉してるが、根底に横たわるのは同族嫌悪とも言える悪意。その確執は物語内の2人の女に留まらず作者自身が加担する3つ巴の様相にまで延伸する。 | [投票(1)] |
★3 | グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(1997/米) | 請負仕事を無難にこなすこれが本当にガス・ヴァン・サントの映画なのかと思った。天才という設定は気が利いてるが捻りなくプレーンすぎる展開と手法のオーソドキシー。なので主人公の悩みは皆目心に届いて来ない。エスコフィエの撮影は深みがある。 | [投票(1)] |
★4 | 溺れるナイフ(2016/日) | 泳ぐ彼に彼女が出会うリアクションショット無き常識破りモンタージュの粗削り感。神話世界を絡ませ強引に独走するが急速に凡化し堕ちた虚像の下世話な価値観さえ突き詰められない。それでも尚ゴリゴリ演出は今後注目すべき。小松はマグロ女の印象を払拭。 | [投票(4)] |
★3 | 西鶴一代女(1952/日) | 墜ちゆく女の人生の幾つかの局面を櫛団子方式でつなぐ脚本は目まぐるしい展開力で飽きはこないのだが大局的な奔流は零れ落ちる。栄華の時期は華が欠け悲嘆の時代は徒に自虐的な田中絹代の演技。明確なポリシー欠く演出と撮影もそれ程のものとは思えない。 | [投票(1)] |