大人も子供も夏休み真っ只中のシネコン、超大作がかかったスクリーンはガラガラ。

空調が効き過ぎてうすら寒い。

目の前では、大地震と津波と原発事故、テロや戦争、あらゆる天災、人災がいっぺんにやって来て、

ミクロな人間の悲喜こもごもを延々と見せられる。

やっと出てきたゴジラは、巨大過ぎて感情移入が出来ない。

何だろう。目が小さすぎて、やはり、爬虫類のようで。

立ち見が出るほどの熱気漂う映画館で昔僕らが感じたのは、

スクリーンの中で逃げ惑う人々と地続きの焦燥感。

ミニチュア都市の精巧な再現と破壊がもたらす一種の興奮。

観客席を少し見回して、

下手したらこの映画館ももう少しで潰されてしまう、お前ら、映画なんか見ている場合か！

という奇妙な一体感。

そういう馬鹿げた怪獣映画の力がこのゴジラにはない。

見知らぬ都市の、他人事ゴジラ。

ハリウッドの資本が食い荒らした後の、焼け野原のような草木も生えない地平に、

茫然と僕らは立ち尽くし、ノスタルジーに浸るしか手はないのだろうか。