[コメント] キューポラのある街(1962/日)
吉永小百合、絶品。彼女が弟たちを叱る、父親に刃向かう、走る、泣く、笑う、その全ての所作の圧倒的な輝きだけでも、この映画は完璧。素晴らしい。
この気丈で溌剌とした女性像は、どうしようもない貧しさがバックグラウンドにあったからこそ成立し得たものだろう。貧乏万歳!と思わず言いたくなってしまう。
映画というメディアの美点の一つとして、その時代の空気、時代の気分をリアルに伝えることができるというのがあると思うのだが、本作もまさに、60年代という時代が克明に刻まれているように見えた。活き活きと描かれる悪ガキたち、東野英治郎演じる職人の頑固オヤジ、「高校へ進学したい」吉永の苦悩、北朝鮮に帰っていく在日朝鮮人たち・・・。現代の映画では決して描かれることがない諸々の情景が、単なるノスタルジーなんかではなくこんなにも胸を打つのは、紛れもなく映画の、映像の力であると思う。
姫田真佐久の撮影も、言うまでもなく素晴らしい。貧しさが美化されているわけでは決してないけれど、どこか爽やかな後味の残る、最高の青春映画だこれは。
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