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[コメント] キューポラのある街(1962/日)

夜の深さがモノクロフィルムに映える。暗くなった公園で子供がまだ遊んでいるシーンがあったが、なんだかドキドキしてしまう。そして大抵のことは夜に起こる。吉永小百合演じるジュンは、意図せずその世界に踏み込み、傷つき、乗り越えていく。
緑雨

そして、川。中学校のグラウンドは荒川の河川敷。友人との大事な会話は土手の道で。鉄橋の下に駆け込んだジュンは大人になったことを確認して嗚咽する。

加えて、人と人との濃密な距離。あの狭い長屋で身を寄せて愛憎がほとばしる。無遠慮に戸や窓を開けて隣人が入ってくる。道にも駅前にも人が溢れている。

それにしてもだ、北朝鮮に還ることが、全く異なる意味合いを持って受け止められることになるとは、この時代には想像もされていなかっただろう。逆に、学芸会で「朝鮮人参!」と野次が飛ぶなど、今の時代では考えられない。社会はすっかり変わった。

わずか100分の映画に、こんなにも多くの要素が含まれている。改めて観ると、なかなか奥深い。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)水那岐[*] けにろん[*] ゑぎ[*]

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