「これはあなたたちのロマンスについての映画だったのね」。

そんな彼女の言葉を借りずともこの映画は（演技派）２人の映画なのだから、どうしても舞台劇のような演技合戦の様相を呈していくわけだ。それをまたトム・フーパー監督が王室の検閲を受けたかのようなオーソドックスな演出で２人の顔の表情を撮り続けるわけだから、一歩間違えばエドワード８世のように逃げ出してしまいたくなるような映画になったかもしれない（実際のところ、クライマックスのスピーチの場面でのジェフリー・ラッシュの大仰な演技には辟易とさえしたものだ）。

しかし、そんな「英国王のスピーチ」ならぬ「ピンチ（？）」を救ったのも私は彼女であったと思っている。それほどこの映画におけるヘレナ・ボナム・カーターの貢献度は大きい。これも前述の言葉こそが本作の肝と心得た彼女が側面からしっかりとサポートしたからだろう。彼女の飾らぬ自然体の演技にどれほど救われたことか。そのような意味でもこれは彼女の存在によって成立した映画だと言えよう。