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[コメント] 英国王のスピーチ(2010/英=豪)

始めから結末が分っている話なのだから、役者の配置と芝居がカギになることは必然で、ジョージ6世にとって治療士が高く硬い壁なら、王妃は跳ね返されて戻ってくる彼を優しく受け止めるクッション。3人の演者のついたり離れたりを楽しむ平民視線のお上品な佳作。
ぽんしゅう

コリン・ファースが吃音演技に仮託して観客(=英国民)に示したのは、ジョージ6世が抱いてしまった王族であることの不安と、その不安(劣等感)が増せば増すほどふくらみ続け空回りするプライドです。王室大好きのイギリス人や、ロイヤルファミリーにコンプレックスに近い敬意をいだくアメリカ人にとって、コリン演じる頼りなそうな悩める我らのジョージ6世は、遠くから励まし、応援し、思わず手をさし延べないではいられない愛しき王様なのです。

だから観客(=英国民)にとって平民で、しかも英連邦の端っこからやって来た治療士(ジェフリー・ラッシュ)は、まさに自分たちの代表として王様を救わんと孤軍奮闘しているように写るのでしょう。それなのに呼び名にこだわり、かんしゃくを起こし、なかなか自分たち平民に心を開いてくれない悩める可哀相な王様。嗚呼、いらいら、ぶつぶつ、どきどき。という平民視線からのくすぐりがこの作品の肝で、作品と観客の正しいかかわりかたなのです。

英国の王様にそこまで入れ込めない日本人の私は、この階級意識を逆手にとったイギリス作品が持っている楽しさの半分も堪能できていないと思います。きっと。・・・それはさておき、ヘレナ・ボナム・カーター、素敵でしたね。

(評価:★3)

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