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[コメント] カムイ外伝(2009/日)

この映画化の表現に於いて何が最も大切なのか、という事が問題。☆3.6点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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「カムイ」の映画化で中途半端な点数をつけたくはないのだが、哀しい事に陰と陽が絶妙なバランスを取っている。そして白土三平の原作世界自体が、<過酷な現実描写>と<忍術武芸帖>との奇妙とも絶妙とも言えるバランスの上に立っている事に、改めて気づく。

例えば忍術の表現にCGやワイヤーアクションは不可欠とは了解し乍らも、余りに稚拙な空間移動であったり合成であったりする時、作品評価は一気に負の方向へ向かうのだが、しかし松山ケンイチを始め役者たちは時として見事な肉体表現で忍びの者を体現せしめて一気に取り戻す。「存在しない鮫」の乱舞や邪魔臭い「鴎の群れ」のCG表現に辟易しただけでなく、時化の表現や余りに群青な海にも納得が行かなかったが、役者たちの存在感と崔 洋一の真実を込めた呪詛がその汚点を見事に穴埋めする。

で実際にはにとってこの稚拙なCGは「必要悪」なのだろうか? 「客寄せパンダ」なのだろうか? それとも満を持して開陳してみせたものなのだろうか? それによって評価も変わるというものだが…。

改めて、カムイを演じた松山は見事だった。「最初は猜疑心から抜け出せずにいたが、徐々に心を開いて行った。- しかしそれ故に訪れる悲劇」という時、彼以外が演じていたら「現代的な」お人好しでナイーヴな人物像にされてしまっただろうと思う。しかし俺が思うカムイは「鍛え上げる事で得た強さを持ち乍らも、生来の優しさを失わない男」である。これはブラック=ジャック(間 黒男)に通じると思うが、現代では中々見かけなくなったヒーロー像である。(現代人は優しさがすぐに弱さに繋がってしまう) そういった意味で松山は若きカムイを佳く演じていた。

大後寿々花の好演というか、熱演には、他の(自称)日本女優たちも見習って欲しいと思いつつ、前述の通り崔 洋一の本意が見えないので作品世界から逸脱しないか一寸ハラハラした。まぁ収まっていたので安心。伊藤英明は白土の<忍者武芸帖>的部分を見事に表現しておりハマリ役だった。小林 薫小雪はこんなものか(予想の範囲内なので佳いと言えば佳いしもの足りないと言えば足りない)。佐藤浩市土屋アンナは頑張り過ぎで例によって自分に溺れている。寧ろもっと無名の役者を捜すべきだった。

自分としては城下町や宿場で潜伏する忍び衆や、山や河で独り自然と闘うカムイも(ついでに犬のカムイも)観たかった。沖縄(奄美?)の海島では明る過ぎてねぇ。

(評価:★3)

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