画面のクォリティは高い。くだらないカメオ出演も多いけど（前田姉妹がもったいない）、新山千春・宇崎竜童の2人は自身の実力以上に頑張っていてとても好感を持った。だがこの映画、オレは納得しかねた。理由を説明します。

昭和29年の『ゴジラ』以降のシリーズを設定上なかった事にするのなら、キングギドラやモスラやバラゴンを出すなって事です。これは初期案のバランやアンギラスでも同様だ。それが仁義ってもんだと思う。平成ガメラの時は、一から新設定だったからいいよ。しかし昭和29年の『ゴジラ』だけをアリとして以後のシリーズを切り捨てつつ、そしらぬ顔でキングギドラを出すのだけは、神が許してもこのオレが許さねえ。キングギドラは金星文明を滅ぼした宇宙怪獣だぜ。これは歴史への冒涜であり、金色のキングギドラを愛したオレの記憶を真っ向から否定するものだ。こんな狼藉、我慢できるわけがない。

そりゃオレだって、この映画のクォリティには喜んだよ。興奮したよ！　でも同時に、昭和29年のゴジラと平成ガメラ3部作さえあれば、まったくいらない映画だとも強く感じた。この映画は、新しいことを何もやっていないからだ。

本音を言えば、もうゴジラ映画はつくらないでほしい。1984年のゴジラを見て以来、ずっとそう思っていた。オレたちのゴジラは終わったのだ。もうそっとしておいてほしいというのが、オレの正直な気持ちだ。

ゴジラシリーズは、長年にわたって様々な視点から、様々な手法で作られてきた。ひどいものも多かった。もう、ゴジラという概念はボロボロになってしまった。「ゴジラ」の定義は揺らいでしまい、観客の数だけそれぞれのゴジラ像が存在しているのが現状だ。

ならば、昔の名前に頼るのはやめて「今」の時代の「今」の怪獣映画を作ってほしい。若い世代が「これは俺たちの怪獣映画だ」と胸をはれるものを。後世に残る、次の世代に誇れるものを。過去ではなく未来に目を向けた、新しい怪獣映画を。平成ガメラのトリオ、金子監督や樋口特技監督や脚本の伊藤さんにはそれができるし、やってほしい。オレはそう願う。怪獣映画に限らず、凄え映画が観てえんですよ。もうゴジラ作ってる場合じゃないんだよ。