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[コメント] ルパン三世 ルパンVS複製人間(1978/日)

カリオストロの城』大好きではあるが、これがオトコ臭いニオイのプンプンする本物のルパン3世であることは疑うべくもない。ルパンが女を夢と呼ぶ次元に「実際おまえはクラシックな奴だよ」と言っていることを想起されたい。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ルパンの物真似というとすぐ「ふ〜じこちゃ〜ん」と猫撫で声で甘える演技がなされる。実際ルパンは女好きだ。だがいざとなれば、ルパンは女をも拳銃で撃ち抜く非情さを持っていることを忘れてもらっては困る。彼は夢のためには何でも犠牲にする男だ。

カリオストロの城』がロードショウ公開されていた時、映画ファンの友人から「今度のルパンってどうだった?」と訊ねられたことがある。自分の答えは「作品の質はいいけど中高生向けだね」であった。「で、お色気は?」「ないよ」「なんだ、つまらない」そう友人は失望の色を露わにしたものだ。高校生のスケベ心と笑ってくれていい。ただ、自分は別の意味でそれ以上彼に「カリオストロ」を勧める気になれなかった。自分の登る山頂がコトもあろうに処女である。そんなちっぽけな夢しか持てない男にいつルパンは成り下がってしまったのか。

この映画でもルパンは女に盛んにモーションをかける。だがそれはルパンの遊び心だ。酒を呑んだりゲームを楽しんだりするのと同レベルで、いつ敵に寝返るか判らない危険な女と彼は遊ぶ。だが、彼が真剣な顔を垣間見せるのは「盗み」の時だ。それがルパン自身の存在理由だからだ。

だからルパンは、自分の夢を奪ったマモーを殺す。その時の顔は、子供ファンには見せられないオトコの冷酷な顔だ。「カリオストロ」は宮崎映画としては傑作だが、所詮は子供向けのミルク&ハニー味アニメだ。この映画との間の関係は『少年探偵団』シリーズと猟奇的な乱歩の作品群ほど違う。両方を楽しめるオトナになるまで待つのもいい。だが、中坊が乱歩の小説を親父に隠れて本棚の陰で読み耽る背徳感覚をルパンはいつまでも忘れないで欲しい。

親子連れで安心して観られるルパンなんて、少なくともオレたちのルパンではない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (14 人)ダリア[*] ベルガル Ryu-Zen kazya-f[*] 鎌倉ルパン[*] ペンクロフ 甘崎庵[*] 4分33秒[*] ヒエロ[*] じぇる KADAGIO[*] ジョー・チップ[*] peacefullife[*] poNchi[*]

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