[コメント] 許されざる者(1992/米)
この映画の演出の素晴らしさを上げ出せばキリがない。しかしこれだけはどうしても記述しておきたい。ラストの決闘シーンは『リオ・ブラボー』のホークスさえ真っ青という決定的な、現在の活劇では希有の簡潔さである。このガン・ファイトに私は涙を押さえきれなかった。それは純粋に演出力に涙しているのである。
どうしてこの映画がアカデミー作品賞なの?という問いかけを私はもう何度となく聞いた。そう、私も同感。この映画はアカデミー作品賞に相応しくないだろう。ただし私の気持ちは「仮にオスカーとかいう賞が真の傑作に与えられるものであれば、この『許されざる者』が獲得する前に『ペイル・ライダー』だって『ホワイトハンター・ブラックハート』だってオスカー作品じゃないか、少なくも『恐怖のメロディ』で監督賞を取らなければおかしいじゃないか。逆に云えば真の傑作に与えられないオスカーがどうしてこの希代の傑作に与えられたのだろう」というものだ。
ま、素直に喜ぼう。このクリント・イーストウッドにしては当たり前に力量を示した決して誰もがオスカーに相応しい名作だとは思わない、しかしイーストウッドのイーストウッドたる傑作がハリウッドでも正当な当然な評価を得たのだと思おう。アカデミー会員もオープニングとエンディングの円環をなす夕景のロングショットにグッときたのだろう。あるいはラストのテロップに参ったのかもしれない。ジーン・ハックマンやモーガン・フリーマンの複雑な人物造型に唸ったか。イーストウッドらしい被写界深度の演出に魅了されたか。ハックマンがリチャード・ハリスを叩きのめすシーンやラストの馬上のイーストウッドのシーン等暴力を象徴するカットの片隅に星条旗がはためくアイロニーに気付いたのか。
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