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[コメント] リコリス・ピザ(2021/米)

オープニング、二人の出会いのシーン。高校の写真撮影の列。ショートパンツの女性の後ろ姿、アラナ・ハイムの歩く姿がいい。クシと鏡。クーパー・ホフマン−ゲイリーが話しかける。同じフレーズを二度云うクセ。
ゑぎ

 歩く二人の移動撮影が、180度カメラ位置を変えたり、二人を前後にずらしたりしながら続けられる。これが見る快楽に溢れる気持ちのいい画面で、既にこの冒頭で涙が溢れそうになる。

 しかし、ポール・トーマス・アンダーソンらしさに溢れた力のある映画だった。恋愛譚として求心力のあるプロット展開を期待すると裏切られるけれど、いくつかの、ずば抜けた力強いシーン/シーケンスがあり、これだけ突出した部分を散りばめられると、未整理な箇所など(それもワザとかも知れないが)、どうでも良くなってしまう。

 私が恐るべき演出力だと感じた部分を列記しておきます。まずは、ティーン・エイジ・フェアでのゲイリーの突然の拘束と走るアラナ。この暴力の強度はどうだ。続いて、アラナが芸能プロダクションの面接を受ける場面で出て来る面接官−ハリエット・サンソム・ハリスのアップのあおり。彼女の科白、口調、煙草の喫い方。実はショット・レベルの強さだと、こゝが一番だと思った。そして、二人のスター。一人目はショーン・ペンで、ウィリアム・ホールデンをもじった、ジャック・ホールデンと云う名前の映画スター。彼の自動車の運転シーンの荒々しいショットは、すぐさま『ファントム・スレッド』のデイ=ルイスの運転シーンを思い出す。映画監督トム・ウェイツがゴルフ場に用意した「トコ・サンの橋」なる映画のバイクスタント再現シーンの狂気的なこと!このシーンのペンは『ザ・マスター』の砂漠のバイクシーン(ホフマンやフェニックス)を想起するではないか。そしてもう一人が、ブラッドリー・クーパーだ。こちらは実在の映画プロデューサー、ジョン・ピーターズバーブラ・ストライサンド版『スター誕生』の製作者)を演じる。ストライサンドの邸宅を舞台にした、凄みを効かした会話シーンから、ぶっ飛んでいるが、ガスステーションでの所業が凄い!これはちょっとやり過ぎの感もあるが、アラナのトラック運転シーンの見せ場も導くのだ。この坂道バック走行シーンの迫力も特筆ものだろう。

 といったことで、ちょっと他のどんな映画でも見ることができないような強烈なシーン/シーケンスを、いくつもぶっこんでくる。やっぱり、この監督の演出力は桁違いだと再確認する。

#ウォーターベッド店の開店パーティで出て来るスー役のイザベル・クスマンも、将来ブレイクしそうな気がする。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)ぽんしゅう[*] 太陽と戦慄 緑雨[*] ペンクロフ[*] けにろん[*] 袋のうさぎ jollyjoker[*]

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