[コメント] ボヘミアン・ラプソディ(2018/英=米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
まず何といっても楽曲の素晴らしさありき。現在54歳なので完全なリアタイ世代なのに、ロックにほとんど関心がなかったので、当時このバンドがどういうふうに好かれていたのか全然わからないのだが、詞のメッセージ性も良いし、作曲・編曲での実験性も素晴らしい。コーラスがずば抜けてきれい。音楽としてのクオリティがめっちゃ高い。CMでもよく使われていることでもわかるけど、それでいてキャッチーでポピュラー。QUEENを知らない世代がこの映画きっかけでQUEENを聴き出すことになったというのはとても良くわかる。
で、こういうバンド伝記ものの面白さって、その楽曲が生まれた背景からの流れで楽曲を楽しめること。制作裏話はもとより、当時のバンドのおかれている状況などの解説付きでその曲を聴けるという点だけはオリジナルでは味わえない良さだ。
で、次にドラマとしてのこの映画の感想。自分が自分の好きなバンドの伝記物を観た場合で想像すると、やっぱりスタッフの「わかってるじゃん」度がどのくらい高いか次第だろうな。難しいのは、それがどんなに「わかってる」度が高くても、しょせんバンドに対する感じ方は人それぞれだし、そのバンドを知らない人にもわかってもらえるようわかりやすく整理・割愛されるだろうから、そのバンドが好きであればあるほど「違うなあ」と思うことも多いだろう。その点でいうとそもそも「及第点があげられるかどうか」すらわからない。
だからこの映画が好きというQUEENを知らない世代に近い感想になってしまうのだが、まずとても才能のある人、天才と呼ばれるような人も実は小さくて弱い一人の人間なのかもな、と思わせてくれることだ。この映画のフレディの描き方は、彼がそのカリスマ性を発揮している場面と、彼自身が一人の人間になって悩むシーンでの「背の高さ」の表現がよくコントロールされていたように思う。彼が悩みや孤独を感じる時の俳優は小さく見えるように撮っていると思う。だから共感できる。そして人には人の助けがいるなあ、ということが伝わってくる。フレディにとって幸いだったのは、QUEENというHOMEがあったこと、それが自分がこの映画に一番感じたことだった。もちろん彼の同性の恋人や家族もHOMEだけど、やはり音楽人として考えた場合、このフレディ以外の人も才能に溢れたこのメンバーだったからこそ、フレディは帰れる場所があって救われたのだと思う。その「場所=HOME」を提供できるのが本当の「友だち」のあり方だろう。
若い世代の共感ポイントは「自分らしくあっていいのだ」というところにあるという話をよく聞くけど、自分の場合は友だちのドラマだ、と思った。友だちがたとえ間違ったことをしても、もしそのことでその友だちが弱っていたら助けなければいけない。友だちとか仲間とはそういう時に無批判に助けてあげる存在だ、そういうことを一番感じた。
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