[コメント] レスラー(2008/米=仏)
美しい映画。美しいダンスシーン。ミッキー・ロークがマリサ・トメイの前ではしゃいで見せるバーでのダンス。ロークとエヴァン・レイチェル・ウッドの廃ホールでのダンス。ロークはこの一作で自身のキャリアをすべて正当化してみせた。栄華も零落もすべては『レスラー』に至るための道だったのだと。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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私は試合のシーンでことごとく泣いた。バスター・キートンの映画やザ・フーのライブ映像を見たときのように泣いた。それは「どうしてそこまでするのか」という涙だ。私の理解がまるで及ばないほどに、彼らは肉体を酷使したアクションをしつづける。どうしてそこまでしなければいけないのか、私にはまったく分からない。しかしそこには確かに美しさがある。理解はできない。だが、ただ美しい。その理解不能な美しさに私は涙する。
ロークら選手たちが対戦相手と試合の流れを相談するシーンにもまた決定的に感動した。それは、プロレスがあまりにも「映画」に似ていたからだ。プロレスも映画と同じく「共同作業」なのだ。観客を楽しませるための共同作業。と同時に、ひとりびとりが演出家であり主演者でなければならないレスラーたちの孤独は計り知れない。孤独な共同作業としてのプロレス。それは映画と同じだ。あるいは人が生きることそのものもまたそうなのかもしれない。だから、ミッキー・ロークは私たちだ。しかしそう云い切ることを躊躇わせるほどに、このロークは醜くも美しく輝いている。
微笑ましいシーンを多く持っていたことも嬉しい。ロークと近所の子供らが触れ合うシーン。「S」の服に固執する、娘へのプレゼントを選ぶシーン。惣菜コーナーでのバイトが調子づいてくるシーン。仲間のレスラーとともに試合に使用する小道具を買うシーン。
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