コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ビッグ・フィッシュ(2003/米)

いつも心に大嘘<フィクション>を! ティム・バートンが教授する正しい御伽噺の作り方、そして伝え方。これは間違いなく彼の、『シザーハンズ』以来の、最高傑作。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原作或いは脚本を始めて読み終わった時のティム・バートンの感動と喜びが目に浮かぶ。彼はこれは俺が映画にせねば、との使命感に燃えたことだろう。

スプーン一杯の空想力が変わり映えのしない現実世界に鮮やかな彩りを加えてくれる、というバートンの信念を知り尽くしているファンとって、アラバマの親子に纏わる物語の向かう結末は、確かに簡単に予想出来るものであるけれど、だからといって画面から得られる映画的サプライズが少しでも減退したか、というと全くそんなことはない。

彼が描いた画面は常に、心の準備や凡人の予測をほんの少しずつ上回る、驚きで満ちている。非現実的なもの、非日常的なもの、幻想怪奇なもの、空想科学的なもの、少女趣味的なもの、セピア色のもの、そんなものがどんどん積み重ねられていって、例の水仙の花畑の頃には俺も、「ああ、俺もこんな嘘なら信じたいな」と思い始めていたし、フィニーとラングがバスタブで抱き合うシーンでは感情移入しまくりで涙がちょちょぎれていた。

そして葬儀のラストシーン。主観カメラによって捉えられる参列者たち。それはクラダップ演じる息子の主観であると共に、フィニー親父のホラ噺を共有してきた我々自身の主観でもある。そう、我々はバートンによってあの葬儀に参列することを許されたのだ!

喜びと悲しみ、驚きと希望が入り混じった不思議な涙が止め処なく溢れ出て頬を流れる。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (12 人)DSCH あき♪[*] ナム太郎[*] づん[*] みくり[*] uyo[*] 緑雨[*] トシ[*] tkcrows[*] ミルテ[*] 水那岐[*] Kavalier[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。