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[あらすじ] カリガリ博士(1919/独)

ふたりの男が並んで腰をかけている。そこに一人の女がフラフラ歩いてくる。美しいがかなり病んでる。視線も定まっていないし動きも異様。どう見てもアヤシイ。そんな彼女を指し示し、男の一人が話しだす。「実はオレ、彼女の婚約者なんだけどね…。」そして、彼らが体験したオソロシイ話が、何もかもが奇妙に歪む不思議な町の映像とともに再現されていく…。サイレントの古典にしてホラーの原型でもあるという狂気の殺人鬼モノ。夜祭り、見せ物小屋、香具師、眠り男、予言、連続殺人、影、おびえる女、拘束衣、精神病院、心の闇、催眠術、古い文献…。本来はもっと短い作品だったが、検閲を恐れた制作者が上記のシーンとエピローグを付け加えさせたとのこと。ドイツ表現主義について→
tredair

人間心理の暗部・邪悪な部分こそを拡大化し、かつ、その心象をわかりやすく過剰に表現しアウトプットするドイツ表現主義。

その映像部門の代表作がこの「カリガリ博士」。残念ながらモノクロ&無音だが、その精神性や美意識などはとてもわかりやすく伝わってくるだろう。

20世紀初頭の風潮を反映して盛り上がり、ナチスの台頭とともにすたれていった、当時としてはかなりアバンギャルドなその<表現の在り方>と<主張>。

これはチェコ出身のハンス・ヤノヴィッツとオーストリア出身のカール・マイヤーによる、「芸術史」に名を残す48分の象徴的な作品でもある。

なお、ドイツ表現主義・絵画部門は<印象主義>に対するアンチテーゼとも言われていて、大胆な筆致とともに色彩が乱舞する野獣派(フォーヴィスムとも言う;ルオー、マルケなどが有名)を礎に、ブリュッケ(橋という意味;キルヒナー、ノルデなどが有名)や青騎士(カンディンスキー、クレーなどが有名)が推し進めていった表現方法。大胆な構図や鮮やかな色使いが特徴の一つとも言われていて、版画に力を入れていた人も多いとのこと。

建築部門は、有機的というかちょっと不気味な感じもする曲線を駆使したものが有名。つまり、この映画に多く登場するソレ。タウトの「ガラスの家」といったような、非現実的だけど現実、これってファンタジー?といった作品もある。

音楽部門は、シェーンベルクベルクが有名。やはり少しひねた面があると言うか、不響和音やいきなり変化する旋律、無調など、ええ!?といった感じで強烈。人間の内面にある様々な気持ちをさらけだすための技法だそうだ。つーか、これは聞かないとわからないと思うので、興味があったら聞いてみてください。

文学については教わらなかったので詳しくないが、たぶん上記のジャンル同様、アンチ印象主義な「ドロドロの内面をあえてひのもとに強烈な手法でさらしてみせるぜ!」といったものだと思われる。(イイカゲンですみません。)

…以上、ガッコーで学んだ簡単なドイツ表現主義について。授業で教わったことというのも、たまには役立つものなんですね。(これを書くにあたって初めて役立ったという気がしないでもないが。でも、サンキューティーチャーと今さらながら思うのであった。)

追記:比較対象として言及されがちな印象主義について

印象主義は、<表現者>が事物から受けた<印象>を受けとったままに表すので、あえて<自己の過剰投影>はしない。写実主義の流れを組みつつの戸外とその光の表現にこだわる作家が多いため、原色バリバリ、デフォルメしほうだい、といったことは避ける。モネやルノアールなどが有名。

(評価:★5)

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