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[コメント] 万引き家族(2018/日)

是枝裕和は自分の考えを言わない人だと思っていた。しかし本作で、彼は「言わない」のでなく「言えない」のだと確信した。正しい・正しくないではなく、疑問を作品に投影する人なのだ、ずっと考える人なのだ。
jollyjoker

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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安藤サクラがアップで言う「産んだら誰でも母親になれるの?」 「生まなきゃなれないでしょう」と刑事(世間)が応えるものの、是枝裕和は問う。鋭く問うている。

そうなのか?この問いは血のつながりについてだけではない。当たり前と思われていることは本当なのだろうか?幸せに暮らすってどういうことなんだろうか?劇中に登場する家族のうち本当に幸せに暮らしているのはどの家族なのだろう。そもそも幸せってなんだろう。

万引き家族は貧困、教育の機会喪失、道徳観の欠如が顕著だが、心は豊かに見える。家族で花火の音を「聞く」、海で遊ぶ、食事を囲む。口は悪くても一人一人をいたわる言動が見える。「りんに役割を担わせるのはこの家に居やすくするため」とまで言わせるのだ。血のつながりがなくとも相手を思いやる心が、どの家族よりも豊かなのだ。

年齢だけがオトナの人間が「産むだけ」で、その子どもは貧しい考え方を持つようになってしまっている昨今。やまとやのオヤジのようになれとは言わないが、忘れかけている「子どもを見守り育てることの本質」を問われる作品だった。

絆とは何だろう。東日本大震災でもてはやされた言葉だが、あまりにも軽々しく用いられるこの言葉に改めて疑問を呈する是枝は、『そして父になる』あたりから続くこのテーマを、次作にも取り入れることだろう。

そして安藤サクラがスゴイ。 つながりは心が大切、でもセックスも大切。そういうことです。

(評価:★4)

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