[コメント] 鬼が来た!(2000/中国)
戦時中の大新聞の風刺漫画を見たことがありますか?そこに描かれる中国人は皆、後頭部に長い髪を垂らした辮髪で、それが豚の尻尾のようなので大抵は「豚」の姿に擬人化されています。
新聞が軍や政府の意向に逆らえずに、仕方なく国策に迎合していたかどうかは問題ではない。
あの当時は「鬼」のような帝國軍人だけでなく、ほとんど全ての日本人が中国人(当時は支那人)を軽蔑すべき民族として認識していた。現在の日本人の感覚では到底理解出来ない状態だが、あの当時我々の民族は確かに中国人を見下していた。
邪馬台国以来、常に教えを請うてきた「師」なる大国に対しての複雑な思いがある。我々は明治維新で血を流すことによって近代化を受け入れ、白人の支配下になる事を避ける事が出来た。だが、「師」なる国はそれを怠った結果、植民地にされてそれを甘んじて受け入れている。
敬慕・尊敬の念が一転するとその反動は凄まじかった。中国の農家で中国人を小突き廻していたアノ日本兵だけではない。日本に住む彼等の家族は恐らく善良なる人だろう。だが、中国の各都市が陥落する度に喜んで提灯行列に参加していたはずだ。
戦時中、中国人を「ちゃんころ」と呼んだ。日本人は「東洋鬼」と呼ばれた。日本軍に刃向かうゲリラをそう呼んだのではない、全ての中国人をそう呼んだ。直接に戦闘や略奪に参加した日本兵だけを称してるのではない。全ての日本人が「鬼」と呼ばれたのだ。
現在の良識ある「私たち」は父や祖父の時代の出来事を冷静に見ている。別の時代の出来事であり、直接に大陸で蛮行を犯したのは「一部」の軍人の仕業だったことにして、一般の市民はあくまでも「戦争の被害者」だったかのようなフリをしている。
「私たち」は「鬼」と呼ばれた。そして今もそう呼ばれている。
この作品を見終わった後で必ず感ずる疑問:「『私』って誰だ?」・・・愚問である。「私は誰だって?お前の事に決まってるだろう」「自分の事も知らないのか?」そんな声が大陸の彼方から聞こえてきそうだ。
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