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[コメント] 鬼が来た!(2000/中国)

1つだけはっきりしている事がある。襲われた側にしてみれば「鬼の所業」であったとしても、襲った側はまぎれもない人間だったということだ。戦争が引き金になったとしても、あれは人間が望んでとった行動に違いはないのだ。日本人にとって、観て不快になることに意義のある映画。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







あれが我々より幾世代か遡る世代の行動の全てではないだろう。だが、行動のひとつであることは否めないことだ。また、日本人だけがやったことでないのも確かだ。しかし、日本人も間違いなくとった行動のひとつである。

我々は母国を蹂躙され、また他国を踏みにじった経験をも持つ。だからこそ見えてくるファクトに目を背けてはならない。「戦争は人間を狂わせる怪物だ」とか、「戦争においては全ての人間が鬼になる」といった詭弁は、完全な責任逃れか一億総懺悔しか生まない。あったことは認めねばならない、日本人が例えば中国において「能動的に」とった行動のなかにあんな行動もあったのだと。(それなくして沖縄、広島、長崎を叫ぶことの醜さよ)

もちろんこの映画は事実に基づいてもフィクションだ。玉音放送を聞いた日本兵がやけくそで村民虐殺をやったり、まして中国国民党軍の下僕となって犯罪者を断罪したりといったことは、あるいは共産中国国民の胸に芽生えた悪夢のようにも思える(前者は似たようなことがないとも断言できないが)。しかし、それを目の当たりにしておぼえた言い知れぬ不快感は是非とも覚えておきたい。他ならぬ同じ人間によって地獄に叩き込まれた人間の記憶を少しでも感じ取っておくのは、友邦たる他国に愚行を繰り返さぬために役立つことであろうからだ。

自分は花屋軍曹がいくらかの抵抗を上官に試みることを、ほんの僅か期待しないものではなかった。だがそれは、70年代西部劇やヴェトナム戦争映画のヒーローに感じるカタルシスと同種の空しさを伴うものであることを、すぐに気づかされた。花屋はここに登場する中国農民と同じ善良な農家の子倅であったのだろう。その彼にしてかく行動したというラストを赤い血の色とともに目に焼き付けることが、この映画を日本人として観る価値なのだと考える。

(評価:★5)

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