脚本とりわけセリフが酷い。台詞が全部説明的なのにその説明さえ重複が多くて耳を疑う。みんな顔がツルツル。主演男女の令和顔。およそ実感というものが全編まったくない。海戦で怪獣による波やうねりが全然ない。いつもの吉岡秀隆。生きてる死んでる問答で頭に白すぎ包帯ぐるぐる巻き男を女がヘッドロック崩れみたいに抱くんだがアタマ痛くないんか。ケガ人がケガしてるように全然見えない。銀座のあと怪獣が去る場面がない。いつもの吉岡秀隆。「ペア」とか「ダメージ」とか「メッセージ」とか言う。震電の誘導は目算も論理もゼロで意味が判らぬ。全編無味無臭のセットばかりで耐え難いが、こんなにいっぱいセット作ってすごいすごーい！　というのが現在の邦画の有様か。広い画がCGしかないし、それも説明に過ぎず、充実とは程遠い。一応出してみた写真、手紙、電報などの小道具にも致命的に興味がなく、扱いがデタラメ。オレだってやれ原爆がーやれ戦後がー特攻がーとか言いたかったけど、それ以前に目で見て明らかにおかしな点が多すぎてそんな話にさえならない。

話法がすべて紋切り型で予想を裏切ってくれない。どうせこうなるんでしょ、がそのまんまそうなる。たとえば庵野秀明監督作を覆っていた「え、どうすんねんお前これ…」みたいな実存的不安は1コマもない。かといってウェルメイドと呼ぶにはあまりにも下手で危なっかしい。そっちの不安はある。すごくある。

たぶん「記号」で「型」をやってるだけで、戦争に対する怒りなんかはまったく、本当にまったくないんだと思う。怪獣もネタ、戦争もネタ。そういう監督なのだろう。