冒頭の娘の棺桶に始まって、ジェミニ司令船、そしてアポロ1号の事故、アポロ11号では司令船から月着陸船、月面での宇宙服、最後は検疫室と、徹頭徹尾閉塞感に満ちているのだけど、それを観客にも追体験させる映画でした。

そのためにこその視野を極端に限定するアップの連続ですが、加えて、ご家庭周辺シーンでのホームムービー風画質＆手ぶれのおかげでまるで自分がその場にいるかのように錯覚させられたまま宇宙に行くので、さらに臨場感というか「一緒に閉じ込められてる感」が増しています。

これが最も効果を現すのがアポロ1号の事故に向けてのシークエンス。まるで『この世界の片隅に』で原爆投下に向けて淡々とカウントダウンが進むのに自分にはどうにもできない辛さを味わったのと同じ気分で、「ああ…」と絶望感をもって付き合うことになります。

実を言うと、予告編を見て「『ライトスタッフ』や『アポロ13』のような職人によるミッション完遂映画を観たいんだけど、このご家庭シーンの多さは（期待はずれだった）『インターステラー』に近い、甘っちょろい話なのかもなー」と期待値はゼロに近くなっていたのですが、ごめんなさい。こんなにリアルに宇宙を体験できる映画だとは思いませんでした。

なお、そういうわけで、宇宙ミッション映画に期待されるカタルシスは微塵も提供されません。危機を脱した安堵感もミッション完遂の喜びも家族との再会も、あらゆる感動要素を（ある意味意地悪なまでに）全て排除して、観客の頭をわしづかみにして棺桶に突っ込んでいます。

覚悟して観に行くべし。