[コメント] この世界の片隅に(2016/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
「音」である。自衛隊の総合火力演習に行ったことがある人間なら聞いたことのある
あの度肝を抜く「音」である。「ずどん」とか「どっかーん」とか文字では表現できない
禍々しいまでのあの音が凄いのだ。そして玉音放送。「朕深く世界の大勢の帝國の現状とに…」
の部分が明瞭なんだけど、当時のラジオの雑音まじりの部分もちゃんとそれぞれ共存した
音響処理的には何て言うんだろうなあ、とにかく「ああ!絶対当時はこう聞いていたはず」
と納得させてしまうのだ。
徹頭徹尾調査した当時の生活習慣を始めとした考証が凄い映画だという話は
鑑賞前からあちこちで聞いてきたが映画館でこれらの音響処理にぶったまげた。
夏の話題作『君の名は』を観たときは「いやー良いお話だったぁ」という感想で
その後に観た『聲の形』で「こっちの方が好きだなあ」と思い、大した期待もせず
もちろん原作も未読で今作を観たときは、もう言葉も無かった。ただただ涙が出てきた。
娘達と一緒に来てたら危うく映画を観て涙を流す父親を見せてしまうところだった。
『君の名は』は人生をやり直せる映画。『聲の形』はやり直せないんだけどまだ間に合う映画。
そして『この世界の片隅に』は、やり直せないし間に合わないけどだけど生きていくっていう映画なのだ。※この形容は僕のオリジナルではありません。
淡々と日常を描き、ただ暗いのではなく厳しい暮らしの中にも笑いのポイントが随所にあり、
そして観る者誰もが知ってる「歴史という結末」原爆投下まで日々が緩やかに流れていく。
人と世代によってこの映画の涙腺崩壊ポイントは分かれると思うが、僕はラスト近くに
登場する浮浪児が、すずさんのほっぺたについたごはん粒を取ってもぐもぐするところで
もうダメだった。
あと能年玲奈あらためのんがとにかく凄い。すずさんのおっとりした子供っぽい
ところから、激しい慟哭までを見事に声だけで(当たり前だが)演じきってみせた。
今いろいろと大人の事情の真っ只中にいる人だけど、誰か拾ってあげないと
いろんな意味で損失だと思うんだよなあ。ベッ○ーの復帰なんかどうでもいいだろうよ。
2017/02/07加筆修正
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