[コメント] アイ,ロボット(2004/米)
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終盤、コンピューターによる管理社会の恐怖から人類を守るという戦いに至る訳だけれど、そこで戦いにぶつけられるべき各人の想いというのが今一歩浅い。また、コンピューター側の人類批判もいかにも教科書通りで物足りない。やはりあそこでもっとネチネチと人類の陰惨たる過去と現在、さらに予測される未来を、人類全面否定をコンピューターには語らせ、対するウィル・スミスに「それでも、俺は人間が大好きなんだぁ!」という人類全面肯定の全身ムズ痒くなるような決めゼリフでも言わせるべきだった。サニーが「それではあまりに心が無い」とサラリと上手い具合に決めてくれているのだが、他の人間2人がどうも成り行きで戦っているだけのような感じで何処かあと一息熱くなり切れず。理屈で計れるものじゃないってのは事実ではあるのだが、やはり映画として、物語として、そこを避けてしまったのは致命的に思える。死んだ博士がサニーに託した熱い希望とウィル・スミスの「そんな事はこの俺様が許さねぇ!!」オーラに上手く誤魔化されてしまった印象。あるいは、戦い終わってからのクソッタレな人類を救ってしまった徒労感とか、個人的にはむしろこっちの方が興味沸くが、例えば、そういうものが一味あれば、正真正銘の傑作になったと思う。やはり見てるこっちが「人権」だの「自由」だのを惰性に貪り、他方で科学の恩恵にベタ浸りで、「機械の管理社会なんてごめんだ!」と無思考・無批判に考えがちなだけに、そこを一度グサリと突いて欲しかった。そこが勿体無い。
とは言え、なかなか堪能させて頂きました、この作品。映像に関しては、もともとこの手の所謂「スタイリッシュ」系な映像に先駆的であった人だけに、その手の映像が飽和状態になってしまってからの本作は不幸に思えてしまう所もあったが、基本的にセンスあると思います。個人的にスローの多用やグルグル『あずみ』カメラはもう少し抑えて欲しい所もあったが、ストーリーのテンポが映像に乱される事は無く、不快感は生まれない。アクション自体も変なカンフー趣味などに走らず、ガッタンゴットンなヘンテコアトラクションにも走らず、SFアクションらしい面白さがバランス良く詰まってて、好感。アニメ好きっぽい臭いがチラホラなのはご愛嬌。
ラストはいかにも「さぁ、考えよう!」「これからどうなるかはあなた達次第だ!」な警笛風味ですが、事件を解決させつつも、変にヒューマンな方向に走り過ぎず、実にSFスピリッツ溢れる作品だと感じます。これは悪い感じがしない。
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