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[コメント] グラン・トリノ(2008/米)

安全牌とも言える前半を只事でないレベルに昇華させるのは、良くも悪くも「最もアメリカらしかった男」自らが「故アメリカ」と「新世界」の歴史的結節点として世界に向かい人柱となる覚悟。終焉と再生。「男らしい非暴力」による贖罪と継承は、この暴力の時代におけるこの男以外に出来ることではなかった。この、時代と選ばれた人間の出会いがもたらす映画を「不朽の名作」と呼ぶ。果てなき水平線は「神聖」なる領域へ・・・
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ライターに込めた祈りは、いずれに転んでも勝利する運命にある。

これってキリストの磔刑・・・?そういえばそれっぽいモチーフ多いですよね。ガラスを割った手から流れる血、倒れた男の姿勢。倒れた際にも手から血が流れますしね。いずれに転んでも彼は勝利した訳ですし。

・・・って3819695さんがこの件書いていらっしゃいましたね。やっぱり後発で書くと駄目ですね・・・

・・・そう考えるとイーストウッド、やり過ぎ感がないでもないですが、それはそれとして、ろくに彼の作品を観もしないでろくでもない保守爺だと思っていた私は深く深く恥じ、彼の「ライター」のシークエンスからエンドロールに至るまでとにかく止まらない涙をどうすることも出来なかったのでした。暴力映画の傑作が次々生み出される今、この偉大なる非暴力の物語をしゃんと張った胸、大きな背中で語った彼。「まったく!」というボヤキが今もこの耳にこだまするのです。今、非暴力の映画を暴力の映画より説得力を持って撮ることがどれだけ困難であることか。

ところで、彼方へ走り去るグラン・トリノと水平線を捉えるエンディングのロングショット。グラン・トリノが走り去ってからしばらくして、ためらいがちに(ここ重要)各国の車が後に続いていくんですね(これに主題曲の盛り上がりがかぶさるんですよ・・・)。さりげないので気づきにくいのですが。単体で切り取れば鼻持ちならない唾棄すべき画になりかねないこのシークエンスに、懐疑的であった私のような人間に対する普遍的な訴求力を付与できるか否かが、まさに「本物」であるかの証だと思うのです。そしてまさにこの男は「本物」であったと、認めざるを得ないと思うのです。

とてつもなく巨大な映画。

(あと、主題曲のヴォーカルソロ→ピアノ伴奏→ヴォーカル引き継ぎ→サビ→ストリングス裏メロ参入→盛り上がり。これ絶対反則。泣くなというほうが無理。)

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)おーい粗茶[*] 3819695[*] Orpheus[*] ナム太郎[*] 水那岐[*]

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