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[コメント] マイライフ・アズ・ア・ドッグ(1985/スウェーデン)

一歩間違えたらお涙頂戴物になりそうな物語を、ユーモラスに、それでいて、ぼんやりと物悲しく描いた、不思議で素敵な映画。
青山実花

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







母親が救急車で病院に連れていかれる場面。イングマルは二階の窓からその様子をじっと見ている。普通の少年映画なら、ここで必死になって母親に付き添うか、泣きながら救急車を追いかけるのがお約束なのであろうが、彼はそれをしない。それどころか、その表情は怒っているようにも見える。でも、それこそが、本来の子供の姿なのだろうと思わせられた。母の病気が心配なのは当然だ。でも子供の心ってそれだけじゃないだろう。不安に押し潰されそうな心。そしてその心をどこへ持っていっていいのか分からない子供な自分。状況は違っても、誰でも子供の頃、一度は体験した事のある思いが描かれているようだ。

イングマルが預けられた先の住人たちと、彼らが紡ぎ出す様々なエピソードには笑わせられる。下着のカタログをイングマルに読ませて興奮している爺さんや、変な彫刻を作る芸術家。それと、私が一番好きなのは、ワイヤーを張って、宇宙船を象ったような乗り物を作って、子供たちを乗せる場面。あれ、私が子供だったら絶対乗ってみたいと思うだろうし、空中で止まってしまう所なんて、いかにも素人の手作りっぽくて素晴らしくて、笑った。

ちょっとした焚き火のつもりが、枯れ草が燃え上がってしまう場面も、本来なら大変な事故なのだろうが、なんともユーモラスで可笑しい。幾多の言葉を尽くすより、あの場面一つで、イングマルの性格から人生まで分かってしまいそうな場面。大変に上手い。

人生なんて笑い飛ばしてしまえというメッセージが聞こえる気がする。

(評価:★4)

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