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[コメント] Dr.パルナサスの鏡(2009/英=カナダ)

怪しげに美しい俳優たちと映像の数々に魅了され、やはり映画というのは才能のないものが撮ってはならないのだと痛感させられる。邦題は工夫が感じられ、久々のヒット。
サイモン64

2010.2.3 TOHOシネマズ梅田で鑑賞。花粉症がひどく、というより花粉症のクスリを今年初めて飲んだら、効きすぎて仕事が続行できないほど眠くなってしまい、早退して鑑賞した。そのためところどころグースー寝てしまい、一部ストーリーがわからないところがあったりする。しかし今日はレディースデイだったために昼間っからカナリの入であった。女性ってのは昼間っからヒマな人も結構いるんだなと思った。

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この映画の邦題「Dr. パルナサスの鏡」の原題は "The Imaginarium of Doctor Parnassus" であり、ちょうど "Imaginarium" の部分を「鏡」と対応させているのだが、なかなか苦心の跡が見られる訳語だ。"Imaginarium"を「aquarium=水族館」のノリで「想像館」にしてしまうと、いまいち雰囲気が出てこないし、「planetarium=プラネタリウム」のノリで「イマジナリウム」とすると、これまた意味不明感がただよう。実際、Dr.パルナサスの見世物小屋は鏡風の飾りをしているが、その中身はまさに "imaginarium" であって"mirror" ではなく、また、「鏡の対語である"mirror" という言葉は劇中ほとんど発されていないように感じたのだが、和訳するには「鏡」以外にないような気がする。邦題としては久々のヒットだろう。

急逝したヒース・レジャーの穴を埋めるべく、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人が「鏡の中のヒース・レジャー」を演じているのだが、鏡の外のシーンを撮り終わっていたのは実に首の皮一枚の幸運だったなと感心した。それぞれのシーンは混乱もあるもののうまくつながっており、さほどの違和感もない。しかし、やはりジョニー・デップという俳優は特殊な存在感があるとつくづく感じさせられる。

悪魔との契約で永遠の命を得た Dr.パルナサスとその一行が繰り広げる見世物小屋のいかがわしい雰囲気は、『オースティン・パワーズ』シリーズで「ミニ・ミー」を演じていたヴァーン・トロイヤーがそもそも持っている見世物小屋的ムードや、パルナサスの娘を演じているリリー・コールの作り物っぽい美しさにより、さらに加速されている感じがする。

悪魔との契約の代償は16歳の誕生日を迎える娘なのだが、彼女を奪いに来た悪魔を演じるトム・ウェイツも好演だ(最初出てきた時にはマルコビッチだと思っていた)。

鏡の中の世界は評判通りの、なかなかの飛びっぷりであるが、色彩感も非常に美しく、俳優と映像を巧みにミックスして作られた本編を見ていると、やはり映画というのは才能のないものが撮ってはいけないものだなと痛感させられる。

万人向けとは言い難いが、美しい映像には癒される。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)死ぬまでシネマ[*] けにろん[*] 甘崎庵[*] 水那岐[*]

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